アフリカ出身学長、日本のコロナ対策に思う事 強い社会基盤をいかに持つかが重要になる

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政府と地方自治体の権限の範囲や意思決定も複雑です。国には、決めたら責任を持たないといけないという意識が働き、自治体は、国より先に勝手に決めると責任を持てないと考える。国の決断を待たずとも責任と強いリーダーシップで決められる権限を地方に与えるべきです。

興味深いのは、日本人は政治にそれほど関心がないのに政府に依存し、国からの発言を待っていることです。アフリカも政治不信は同じですが、まだギリギリ地域共同体が機能し、地域の動きを政治家が利用してサポートする例が見られます。

昔の日本は、京都の地域住民が国に先駆けて小学校をつくるなど共同体の力がありましたが、今は自治会レベルでも国の決断を仰いでいる。共同体が壊れ、相互扶助もできなくなっています。

日本は対面式の教育を重要視してきた

―――休校が続いています。今後、日本の教育はどうしたらいいでしょうか。

従来のあり方にこだわると、教育は崩壊する危険性があります。大学などのオンライン授業は、質の保証を維持するために今後はもっとクリエーティブな遠隔授業のやり方が出てくるはずです。いま、先生がオススメの本を紹介したり、ゲームに近いような授業や参加型授業をしたり、授業そのものの内容に工夫が見られます。

小中学校や高校について、OECD加盟国の多くは以前からオンラインと対面式授業を併用しています。しかし、日本は対面式を重要視し、オンラインと併用させてこなかった。例えば、国や自治体が各家庭に最低コンピューター1台やポケットWiーFiを提供し、生活と子どもの教育に使ってもらう、というような手伝いもしなかった。こうしたところは改善されなければならないでしょう。

日本では、先生に呼ばれて初めて、うちの子の成績がいい(悪い)ことがわかります。学校と親がオンラインでつながり、双方で学習状況をしっかり共有していないからです。コミュニケーションの手段が変われば、親も子どもの変化を追いかけられます。

学校は、「親に迷惑をかけてはいけない」「親は忙しい」と考え、親の負担を軽減しようとする意識をもっているので、コミュニケーションが取れません。そもそも「親が子どものことを考える暇もないほど忙しい」という現状には、疑問があります。

また「子どもが2週間家にいただけで親が大変」という声をよく聞きますが、親がわが子とじっくり1~2週間、一緒に過ごせない状況がつくられていることに、非常に驚きました。日本は、子どものことで親が仕事を休んでも、国や自治体または会社が全面的に補償する制度になっていません。

休んだ分、損をするとなれば、子どもを育てるお金がなくなるのだから仕事をしなくてはいけない。そういう社会だから、わが子との向き合い方がわからない親が増えていると思います。この機会に社会のあり方を変えていくべきです。

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