アフリカ出身学長、日本のコロナ対策に思う事 強い社会基盤をいかに持つかが重要になる
世界的に感染が広がる新型コロナウイルス。アフリカのマリ共和国出身で京都精華大学学長を務めるウスビ・サコ氏に、新型コロナウイルスがもたらしたさまざまな問題点を語ってもらった。今回の事態から私たちは何を学んだらいいのか。日本の社会や教育のあり方について提言する。
コロナで表面化したグローバル経済のもろさ
―――新型コロナウイルス感染拡大をどのように受け止めていますか。
感染が広がり始めたころ、私は医療崩壊が起きているアメリカやヨーロッパ、そしてアフリカをまわっていました。アフリカの空港では体温チェックがあり、ジェルで手を消毒させられ、アンケートでは渡航歴をたずねられました。当時の欧米は「自分たちの国の医療環境は充実しており新型コロナはアジアの問題で関係ない」と思っているようでしたが、それから2カ月も経たないうちに世界中に広まります。
すぐにいろいろなことが見えてきました。例えば、世界で使っているほとんどのマスクが中国製ですが、どの国でも手に入りにくくなりました。中国でマスクを作る工場が日本や欧米の資本下にあっても、中国政府はマスク輸出に制限をかけることができる。
もちろん、国際法的には中国に権限はありませんが。こういう事態になると、中国からの輸出の途中でドイツ向けに送られるマスクがフランスにとられたなど、各国で確執が見られ、ヨーロッパ諸国はこんなに弱かったのかと思ったものです。
私たちがしっかり出来上がっていると思っていたグローバル経済の基盤は、実はそうでもないということがわかりました。各国の本音、国と国の関係性、コストを重視したグローバル経済のもろさが表面化したことを興味深く見ています。
フランスの医師が「ワクチン治験はアフリカで」と発言して差別意識が見えた一方で、アフリカ人はヨーロッパ諸国の社会基盤のもろさに気づいています。また中国が多くの国に力を貸すなど表に出なかった依存関係も見え、今後は経済のあり方や国同士の関係も変化するでしょう。