アフリカ出身学長、日本のコロナ対策に思う事 強い社会基盤をいかに持つかが重要になる

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―――感染対策が成功している国、そうでない国について、どうご覧になっていますか。

ウスビ・サコ京都精華大学長(写真:京都精華大学提供)

成功するためには、死者の数だけでなく、国としての未来への希望が失われていないことが重要です。希望のある国と地域は総じて統治能力が高い。例えば、台湾では政権を構成しているのが政治家というより専門家集団であり、現場のことをわかっています。

また、北欧諸国は、国民の国に対する信頼が厚い。休業問題では、日本は補償が期待できず休業しないケースが問題になりましたが、北欧やドイツは、要請に応じれば必ず国から補償されると国民はわかっており、国との協力関係ができています。

アフリカ諸国の管理能力への見方はさまざまですが、いくつかの国の対応策は高く評価されています。また、エボラ出血熱の対策に慣れた国は、現状ではある程度コントロールできているはずです。ただ、拡大すれば医療崩壊するという危機感を共有し、若者中心の社会活動が盛んです。手洗いを呼びかけ、装置がない村に検査キットを提供するなど、地域共同体や家単位でインフラ不足を支えています。

政府の決断が脆弱な日本

―――日本政府や自治体の対応についてご意見をお願いします。

日本は政府の決断が脆弱で、どこまで責任を持つのかはっきりしないため、国民が迷っています。何かあったときに「お前のせい」と言われることを恐れ、動けない。この不安定な状況は、政府の決断能力と意思決定プロセスに関係しています。

今の政治家の一部は現場感覚や想像力に欠け、市民生活を考えれば当然必要な休業要請と補償をセットにしていません。ほかの国のように半年間、光熱・水道費や税金をゼロにするなどの有効な方法も取らず、政策がインパクト重視でポピュリズム的と言われても仕方がないでしょう。

「いかに有権者にいい顔をしながら期待される決断をするか」という意図だけが伝わってきて、結局は自分たちが損をしない範囲のことしかしないとわかってしまったため、国民の気持ちが離れています。

問題になった安倍首相が犬を抱いてお茶を飲む動画も、自国民が何百人と感染すれば眠れないほどの悩みになるはずで、国民への気持ちはその程度だと宣言したようなものに思われてしまった。本当に国民を思うなら、自分のクビが飛んでもいいくらいの覚悟で大胆な政策を発表してほしいと、国民は期待しているはずです。

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