原油暴落で窮地に立つ米シェール企業の耐久力 負債1兆円企業が破産法11条適用申請を検討

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とくに注目度が高いのが、シェール業界の雄であるオキシデンタル・ペトロリアムの動向だ。昨年、シェブロンに競り勝って同業のアナダルコを約380億ドルで買収。今や総資産は1000億ドル強に及ぶ。その買収支援として、ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが100億ドル(1兆円強)の優先株を取得した。普通株も5%近く保有している。

最大の「堕天使」になったオキシデンタル

しかし、この大型買収によって債務が急膨張。そこへコロナ危機による油価急落と信用収縮が襲い、ピンチに追い込まれた。債務縮小のための資産売却計画も頓挫。3月中旬から信用格付け会社が同社の格付けを相次ぎダブルB格へ引き下げ、今では「最大のフォールン・エンジェル(堕天使=ジャンク債への降格企業)」と呼ばれる。

買収に反対していたアクティビスト(物言う株主)のカール・アイカーン氏の圧力を受け、3月には同氏が推す取締役3人を受け入れることに合意。4月半ばには手元流動性を維持するため、バークシャーが持つ優先株に対する特別配当を現金ではなく、普通株で支払うことを決めた。

22億ドルの赤字となった決算発表でビッキー・ホラブ社長兼CEOは、投資圧縮、営業費用節減、買収シナジー創出を加速することを強調。「当社が誇る低コストの事業運営と世界クラスの資産によって、市場環境が改善したときには一段と競争優位が明らかになる」と自信を示した。

だが、同氏は4月3日にほかの石油業界幹部とともにホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領に支援を直訴したといわれる。石油業界はトランプ氏の有力な支持基盤であり、11月の大統領選に向けた応援の見返りを求めたのかもしれない。

実際、トランプ氏は4月21日、同業界への資金支援計画をまとめるよう指示し、「偉大な石油・ガス業界を決して失望させない」とツイートしている。ただ政府がどこまで救済に関与するかは定かではない。

最大の問題は、市場環境の改善がはっきり見通せないことだ。アメリカでは各州で経済封鎖が段階的に解除され、ガソリン需要も底入れしている。油井とガス井を掘削するリグの稼働数は1年前には全米で約1000基あったが、今では400基を割り込んでおり、供給も削減される方向。4月20日に貯蔵容量縮小とETF(上場投信)の投げ売りで史上初のマイナス40ドルへ暴落したWTI期近物は現在、27ドル前後まで回復している。

しかし、業界の平均採算ラインとされる40~50ドルには依然ほど遠い。経済活動を再開すれば、ウイルスの感染第2波が到来する懸念も強い。減産による在庫減少でマイナス価格が再現する可能性は低下したが、採算ラインを下回る油価が長引くことは十分想定される。現在、WTI12月物は31ドル台、来年6月物は33ドル台で取引されている。

今後、シェール業界の淘汰再編が加速する公算は大きい。危機的状況にある企業が資産を売却して事業を縮小・廃止していく一方、エクソン・モービルやシェブロンなどの国際メジャーを含め、体力のある企業への資産の集約が一段と進むことになりそうだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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