原油暴落で窮地に立つ米シェール企業の耐久力 負債1兆円企業が破産法11条適用申請を検討

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そこで、4月末以降に発表された総資産1兆円を超す大手シェール開発企業(国際オイルメジャーを除く)の2020年1~3月期決算を整理すると以下のようになる(総資産規模の大きい順)。

これを見てわかるように、EOGリソーシズとパイオニアナチュラルリソーシズ以外はみな赤字だ。EOGはITを活用した低コスト経営に定評があり、「石油業界のアップル」とも呼ばれる会社だ。

16億ドルの減損を計上したが、何とか黒字を維持した。決算発表でEOGのウイリアム・トーマス会長兼CEOは、「EOGは強靭な会社であり、パンデミックの試練に対処するため、迅速に事業を見直した」と述べ、2020年の設備投資計画を当初比46%削減するとともに、WTIが30ドル以下でも採算の取れる油井に絞って生産する計画を発表した。

老舗のアパッチも債務超過に転落

一方、最も懸念されるのが、45億ドルの大幅赤字で債務超過に転落したアパッチだ。1954年設立の老舗で、全米最大規模の油田であるテキサス州パーミアン盆地などで生産する。1~3月期は減損45億ドルが響いた。

同社のジョン・クリストマン社長兼CEOは、「この困難な状況に対応し、財務・事業面の抜本策を決断した」として、設備投資計画の縮小や減配、油価低下に備えたヘッジ取引の開始、組織再編によるコスト削減、全油井・ガス井の経済性見直し・一部閉鎖などを挙げた。

こうした対策に加え、銀行団との総額40億ドルに上る融資枠契約によって流動性を確保し、たとえ営業面でキャッシュフローを生み出せなくても、今後3年間の社債の償還や借り換えに対応できるという。しかし、株価は2020年1月から3分の1以下に沈んだままだ。

企業によっては、年内の予定生産量の大半を40ドル程度のWTI先物価格でヘッジしているケースや、今後2~3年は社債の償還期限のないケース、資産の減損が相対的に厳格なケースもあり、足元の赤字決算だけでは一概に財務の安定性は判断できない。

むしろ、市場全体の見方が集約された株価がより実態を反映している可能性もある。その点で言えば、株価が低水準で戻りも鈍いアパッチのほか、マラソン・オイル、デボン・エナジー、オキシデンタル・ペトロリアム、ノーブル・エナジー、コンチネンタル・リソーシズに対する市場の懸念が比較的大きいようだ。

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