今後の焦点は、シェール業界の経営破綻がどこまで広がるかだ。同業界はリーマン・ショック以降の低金利環境の中、レバレッジ(負債によるテコの原理)を利かしたシェール開発競争を演じてきた。高騰する開発用の土地リース代などに、社債などで調達した莫大な資金が投じられた。その結果、今やアメリカは世界最大の産油国となった。
しかし、もともと新興で財務体質が弱く、市況に左右されやすい業態のため、信用格付けが投資不適格の企業が多い。結果的にシェール業界は、アメリカにおけるジャンク債やレバレッジドローン(投資不適格企業向けの融資)の主要な債務者となっている。その債務の多くがいま、デフォルトの危機に直面しているのだ。
2021年までに500社超す破綻も
独立系調査会社ライスタッド・エナジーの調査部門ヘッド、アーテム・アブラモフ氏の分析によると、アメリカ国内の石油・ガス開発会社は約9000社あるが、WTI(ウエスト・テキサス・インターメディエート)価格で1バレル30ドル(現状は期近物で27ドル前後)が続く前提では、2020年に破産法11条適用を申請する石油・ガス開発企業の数は73社に上り、2021年には170社に増える見込みだ。
もし1バレル20ドルが続くと、2020年に140社となり、2021年には393社へ激増する。2019年は42社で、前回の油価低迷期の2016年でも70社だったので、桁違いの多さだ。そして2020~2021年に総額2500億ドル(約27兆円)の債務がリスクにさらされるという。
「重い債務を抱えた石油・ガス開発企業の爆発的な経営破綻を抑えるためには、WTI価格で1バレル40~45ドルが必要」とアブラモフ氏は見る。
約9000社に上る石油・ガス開発企業のうち、大半は保有する油井・ガス井の数が1桁という小規模な企業や家族経営の企業が占める。一方、生産量で見ると、上位10社で全体の3割強、上位50社で7割近くを占める。金融市場でとくに関心が高いのは、チェサピークのような大手上場企業の破綻が相次ぐかどうかだ。
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