日本が「戦わずとも負けてしまう」と言える根拠

現状の危うさを冷徹に分析する必要がある

対峙する敵の姿を見誤り、あるいは意図的に偽って虚像をつくり出し、自国の姿さえみようとせずに粉飾しているようでは悲観的な未来しか見えてこない(写真:ロイター/Toru Hanai)

平成期の30余年を軸に過去を振り返り、2012年12月以降の安倍政権の振る舞いを分析することによって、経済、社会、政治の現場で起こっていることを追っていく――。それが、『令和日本の敗戦』(田崎基著、ちくま新書)の目的だ。

著者の田崎基氏は、憲法改正問題、日本会議、経済格差問題、少子高齢化問題、アベノミクス、平成の経済を担当している神奈川新聞記者。物々しさをも感じさせるタイトルには、次のような思いが込められている。

この国は近い将来、戦わずして「敗戦」状態に陥るのではないか。これまでに起きた出来事の1つひとつの点を線で結び、時代を立体的に捉えることで、見えてくる構図。それが令和日本の「戦なき敗戦」である。迫りくるその焦土を、私たちは避けることができるだろうか。(「はじめに」より)

7年余りを経た安倍政権は、いまだ「この道しかない」と経済成長を唱導する。ところがそんな鼻息の荒さは、いま起こっている現実からあまりにもかけ離れていると言わざるをえない。

なにしろ経済格差は拡大の一途をたどり、非正規雇用比率は高止まりを続けるばかり。労働者は長時間労働を強いられているにもかかわらず、実質賃金は減り続けている。そのため必然的に産業は衰退し、国際競争力向上の期待は薄い。

そんななか、少子高齢化は“着実に”進み、孤独死は年間3万人に達している。一方、子どもの貧困が深刻化し、10代の死因のトップが戦後初めて「自殺」となった。

そんなこの国の現状は、まさしく「焦土」にも等しいということだ。

戦わずして敗戦する国

しかもアメリカに媚を売る安倍政権はアメリカ軍との一体的軍事を深化させ、集団的自衛権の一部行使を容認した。また、それに基づいて安全保障関連法制を強行採決。権力を盾に市民の声を圧殺し、沖縄県の名護市辺野古沖では新基地建設を断行した。

つまり、「表現の自由」「身体の自由」など、近代国家に生きるわれわれにとっての大前提であったはずの基本的人権が踏みにじられ、民主主義が破壊されているわけである。

安倍晋三首相は、国の最高法規である憲法に「自衛隊」を明記し、緊急事態時に政府の権限を強大化しておく「緊急事態条項」を盛り込もうとする改正案も訴え続けてきた。

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