日本が「戦わずとも負けてしまう」と言える根拠 現状の危うさを冷徹に分析する必要がある
今回、新型コロナウイルスの蔓延に伴って緊急事態宣言は発令されたが、それにかこつけて安倍首相は先の憲法記念日に「緊急事態対応を憲法にどう位置づけるか、議論を進めるべきだ」と主張した。
コロナ禍を憲法改正に利用しようという発想は危うく、あまりにもお粗末だとしか表現のしようがない。
だが、田崎氏も指摘しているように、そこにはいくつかの疑問が生じる。
また、2016年7月の参議院議員選挙で自公政権が圧勝し、このとき衆院、参院ともに「改憲勢力」が3分の2を超えたとされる。したがって自公政権は会見を「発議」できたはずだが、改憲論議はいっこうに進んでいない。安倍自民党総裁が改憲項目を4つに絞り込んだのは2017年5月3日だが、自民党はおよそ3年を経た今も衆参それぞれの憲法審議会でこの4項目を示すことさえできていない。(「はじめに」より)
このように矛盾に満ちた数々の事象を並べたうえで全体を俯瞰すると、ひとつの仮説、構図が浮かび上がると著者は指摘している。50%前後という低い投票率、高まる若年層の自民党支持、つくり出される周辺国との摩擦と軋轢、圧倒的な少子高齢化、疲弊する経済――。
それらを改めて確認するまでもなく、社会、経済、政治が一体となり、この国は奈落へと向かっているのではないかということだ。
いってみれば、それが令和における「戦わずして敗戦する国」の形だということである。
景気後退局面への突入
だが当然ながら、ひとごとのように傍観しているわけにはいかない。なにより気になるのは、この先どうなっていくのかということだ。
この点については政府統計に詳しい明石順平弁護士による「まともな出口戦略は描けない」との観測が紹介されている。2019年1月に衆議院本館で行われた野党合同ヒアリングで、厚生労働省が公表してきた実質賃金の偽装を整然と説き明かしてみせた人物である。
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