地位の低い人ほど、寄付をしがちな根本理由 社会の平等度の違いで金持ちの行動も変わる

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
社会的地位が高くなるほど、なぜ特権意識が強く思いやりに欠けるのか(写真:Nattakorn Maneerat/iStock)
所得格差が大きな社会では、人々はより強くストレスを感じ、不平等は人々の心に悪影響を及ぼす。いち早くそのことを指摘し、全英ベストセラーとなった『平等社会』。
同じ著者たちの待望の続編『格差は心を壊す 比較という呪縛』がこのほど翻訳出版された。この新刊では、不平等が私たちの心をどうむしばんでいくのかを解き明かしている。500超の文献と国際比較データを駆使して書かれた本書の一部を、全4回に分けて抜粋・編集して紹介しよう。第3回のテーマは、なぜ金持ちほど特権意識が強く思いやりに欠けるのかである。

ポール・ピフはカリフォルニア大学バークレー校の社会心理学者だが、注目すべき一連の実験を行った。

その実験の主要な関心対象となったのは、社会階層、感情、それに社会集団と、心理学者が「順社会的な」行動と呼ぶものとの関係だった。順社会的な行動とは、分かち合い、ボランティア、協力、人助けのような、他人や社会に恩恵をもたらす行動である。

貧しい人ほど他人に寄り添い助け合う

最初の実験でピフと彼の同僚は、“社会的な下層階級”にいる人々の順社会的な行動について調べた。この人々とは、教育水準の低さ、所得の低さ、社会的地位の低さ、争いが絶えない家族関係のような貧困に伴う諸問題といった生活環境のために、自己管理意識が低いとされる人々である。

『格差は心を壊す 比較という呪縛』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

ピフらが知りたかったのは、この集団の人々が、社会的地位の低さにもかかわらず(あるいは、おそらくそれゆえに)、所得や教育の高い人々よりも、他人の悩みに寄り添い、お互いに手助けしようという意識が強いのか、それとも弱いのかということだった。

アメリカでは、所得に占める慈善活動への寄付の割合は、富裕層よりも貧困層のほうが大きい(おそらく、何とか暮らしていくためには社会的な団結や絆に頼らなければならないという自らの体験に基づいている)ことは、周知の事実である。

低い階層の人々ほどパートナーにより多くのお金を手渡し、相互の信頼が高く、家族の総所得からできるだけ多くのお金を慈善活動に寄付すべきだと思っている。

また、厳しい社会環境でパートナーが困難に陥ったと思われる場合、彼らは積極的にパートナーの助けになろうとしたこともわかった。社会階層の低い人々は順社会的であるばかりでなく、道徳的でもあった。

2番目の実験でピフたちは再び、研究室の実験だけでなく、交差点や横断歩道の自動車ドライバーの反応を観察することも行った。

それによれば、(値段だけでなく、車種、車齢、外観などの点でみて)社会的に高く評価される自動車に乗っているドライバーほど強引に他人の車の前に割り込む傾向があり、また道路を横断する歩行者が目に入っても、車を積極的に止めようとしないことがわかった。

次ページ上流階級はうぬぼれが強く、他人にうそをつく
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事