日産、コロナに翻弄される「再建計画」の行く末 販売が急減、さらなる「リストラ策」は必至

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ゴーン政権下ではインドやインドネシアなど新興国を中心に新工場を相次いで建設した結果、生産能力は世界全体で年720万台にまで膨れ上がった。一方の販売台数はピーク時の2017年度でさえ577万台にすぎず、2019年度は479万台。2年間で100万台も減った(上図)。差し引きで200万台以上もの過剰な生産設備を抱えることになり、人件費や減価償却費など固定費の負担が経営の大きな重荷になってきた。

日産は西川廣人前社長が在任中の2019年7月、2022年度までに生産能力を660万台まで縮小するプランをまとめて、すでに実行に移している。「西川プラン」では販売台数を500万台後半に設定し、工場稼働率を69%から86%に改善させる青写真を描いていた。

仮に5月下旬発表の中計で目標販売台数を500万台と設定し、他社への委託生産などを考慮せずに単純計算すると、稼働率86%を実現するための生産能力は580万台程度になる。660万台から80万台の能力を追加削減する必要が生じるが、これは仮に欧州の全生産拠点を閉鎖してもまったく足りないほどの規模だ。そのうえ、新型コロナによる販売激減で新中計の前提条件が下押しされているとなれば、合理化の規模はさらに膨らむ。

東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「新型コロナで販売低迷が長期化することを考えると、販売500万台では甘い見通しだ。一部の生産ライン停止だけでなく、主力工場の閉鎖にも踏み切らざるをえないのではないか」と指摘する。

販売増による再建は非現実的

日産は今年度から新型車攻勢に出ようとする計画があるが、「新型コロナの影響で新車開発の遅れが出ている」(日産関係者)といい、出ばなをくじかれた格好だ。実際、アメリカでの最量販車であるスポーツ用多目的車(SUV)「ローグ」の新型車を、今春にも投入する予定だったが、先送りすることになった。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

ゴーン時代に生産能力の増強にばかり投資を振り向けてきた結果、新車開発が遅れて古いモデルの“高齢車”が増えてしまったという事情もある。販売増加を主軸とした再建はあまり現実的ではない。

内田社長は2020年2月の記者会見で、「(事業の展開を)断念せざるをえないような地域や分野が出てくるかもしれない」と発言した。合理化策が大規模になればなるほど、社内や関連サプライヤー、現地政府などの反発も大きくなる。日産再建に向けた経営陣の覚悟が問われている。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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