WBFが運営するホテルについて、東洋経済が不動産登記簿を取得したところ、複数のホテルの所有権が信託銀行に移転していた。このうち「ホテルWBF京都東寺」は、不動産ファンドのケネディクスが組成した私募ファンドに含まれている。ケネディクスは「運用方針についてはコメントできない」としているが、同ファンドには九州電力も出資しており、運営会社の倒産は投資家のリターンにも跳ね返る。
ホテルの賃料は一般的に、売り上げに連動する変動賃料と、売り上げにかかわらず毎月一定金額を支払う固定賃料とで構成される。ホテルの売り上げ減少を受け、受け取る変動賃料を「0円」と見積もる不動産会社は多いが、収入が途絶えているホテル運営会社にとっては固定賃料の支払いさえ難しい。運営会社の倒産を防ぐためにも、不動産会社は固定部分の減額にも踏み込まざるをえないだろう。
「回転型」ビジネスの功罪
現在進行形でホテルを保有している不動産会社だけでなく、開発したホテルを売却する不動産会社への影響も無視できない。不動産登記簿によれば、大阪市内に立つWBFが運営するホテルのうち少なくとも4棟は、関西地盤のデベロッパーである日本エスコンが開発、売却していた。
関西国際空港のすぐ近くでは、東急リバブルが「ホテルWBFグランデ関西エアポート」を開発中だ。今年7月の竣工予定で、その後は投資家へと売却する予定だが、「現時点では開発計画に変更はない」(同社)。
ホテル業界が沸いていたここ数年、不動産各社はこぞってホテル開発に参入した。多くは開発したホテルを系列REITや外部の投資家に売却し、回収した資金でさらに多くのホテルを開発するという「回転型」ビジネスだ。「昔は興味を示さなかったマンションデベロッパーが、宿泊単価上昇を受けてホテル開発に参入してきた」(大手デベロッパーのホテル開発担当者)。
インバウンド需要を追い風に、オフィスや商業施設よりもホテルの収益性が勝った時代には、投資家もホテルを欲しがり、物件と資金がうまく「回転」していた。好循環が続く間は爆発的な利益をもたらす回転型ビジネスだが、ひとたび開発物件の売却が滞れば、資金繰りに窮するおそれがある。
もともと負債総額が多く、行方が注目されていたファーストキャビンとWBF。2社の倒産劇は、これから起こる波乱の幕開けにすぎない。
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