追跡!「結婚5年の幸福度」6組の想像超える変化 "35歳以上で結婚した人たち"の現在の本音

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<2人目が欲しくて受けていた不妊治療をやめて、今は精神的に安定しています。夫の実家に入る入らないの騒動も入ることで終わり、子どもを育てる環境や方向性が固まってきました。幸せ度は5年前と同じ100なのかもしれません。同じ100でもその中身の割合が変化した感じがします。5年前に足りなかったところを今では補えているけど、5年前にあったものが目減りしたかな>

5年前は明弘さんの実家近くのアパートに家族3人で住んでいた斎藤家。2年ほど前からは実家で認知症の父親と同居している。「嫁」の立場である紀子さんは気苦労が多い環境だ。

<義姉も同じ屋根の下に住んでいます。義姉とは台所とお風呂は別なので顔を合わす時間は少ないのですが、義父の食事は私たち家族と一緒です。以前は、家族3人で遊びや外食に行ったりと自由にできていました。でも、今は家族が4人という感じなので気を使うことが増えました。義父は認知症があり、できないことが増えてきているのでそれなりにお世話が必要です。週に2回デイサービスに通っています。毎日義父のことも考えて過ごすので、精神的に疲れることも少なくありません>

一方で、「足りなかったところを今では補えている」部分もある。子どもとのかけがえのない思い出と、それを通じて深まった明弘さんとの絆である。

<子どもの幼稚園生活は、お母さん方や子どもたちとの関係も深く、とても濃い3年間でした。また、キャンプや海、川、スキーなどたくさんのことを息子と一緒に体験し、とにかくもう本当に忙しかったです。子どもがいなかったらこんな経験はできなかったでしょう。

義父や義姉のことで主人ともめることもありますし、子育てについての意見の食い違いもあります。ただ、これらを含めての結婚だということは理解しているつもりです。主人とは趣味が同じ(テニスとゴルフ)で、共通の友達もいますので、関係の修復はしやすいと思います>

むしろ変化することを求めた人たち

以上、6人の晩婚さんに5年後の生活と心境を聞いてきた。独身者や若い夫婦と比べると、変化が大きい5年間だったのではないだろうか。小さな子どもがいる家庭はもちろんのこと、子どもがいない夫婦でも配偶者という他者が身近にいて、お互いの親の老いも加速していく。戸惑いながらもなんとか対処して、小さな幸せを生活の中に見いだすような日々だと思う。

価値観や生活習慣が固まってから生活が変わることは誰だって恐れを感じる。晩婚さんはそれを乗り越えて、むしろ変化することを求めた人たちだ。今までの人生経験をフル活用し、知恵と我慢も重ねて、ちょっと遅めにスタートした結婚生活を維持・発展させてきたのだ。彼らはこれからも変化に適応し続け、自分たちなりの幸せを確保していくのだろう。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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