新大阪駅前にあるホテルの喫茶店で、派遣社員の藤村博美さん(仮名、51歳)を待っている。昨年5月に結婚式を挙げた晩婚さんだ。
夫の後藤純一さん(仮名、47歳)とは、マッチングアプリで出会い、会社と自宅が奇遇にも「丁目まで同じで徒歩圏内」とわかって意気投合したという。通勤を純一さんの自家用車に同乗させてもらいながら交際を深めた。後述する理由で婚姻届は提出せず同居もしていない。別居婚にして事実婚である。
筆者は博美さんとは初対面だ。喫茶店での待ち合わせのためにお互いの携帯電話番号と身体的特徴を教え合った。筆者のほうは本連載の著者ページや自分のホームページで顔写真を公開している。博美さんは「芸人のりんごちゃんに似ているとよく言われます」とのこと。実際、ポッチャリ美人が笑顔で来てくれた。
前夫との間にできた2人の娘がそれぞれ21歳と22歳のお年頃だという博美さん。「お嬢さん育ちの上品なお母さん」といった風情だが、前夫による激しいDVと彼の借金返済のための風俗アルバイトといった壮絶な経験をしている。つらい思い出かもしれないが、ある分野の芸術家だった前夫との結婚と離婚から聞いておきたい。
芸術家だった前夫の「妄想」
「10歳年上の彼と結婚したのは私が25歳のときです。東京で1人暮らしをしていた私は部屋を季節感のある芸術作品で飾るのが好きで、若い作家の作品をときどき買っていました。彼に出会ったのもデパートの催事が縁です」
1年ほど付き合ってから2人は結婚することにした。交際中の彼はすごく優しくて、上手に褒めてくれたと博美さんは振り返る。
「自分は好き勝手に生きてきたけれどあなたはすばらしい、あなたを見ていつも思うのはイノセントという言葉だ、なんて言ってくれました。実際の私ですか? イノセントではないと思います(笑)」
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