博美さんが婚活アプリに登録したのは2年前のこと。当時付き合っていた恋人から別れを告げられて「ズタボロ」の精神状態になっていたところ、派遣会社の同僚から婚活パーティーや婚活アプリを勧めてもらったのだ。
婚活アプリを始めて5日目に知り合ったのが現在の夫である純一さんだ。お互いに「いいね」をし合ったことから連絡を取り合うようになり、博美さんのほうから「1回お茶でもしましょう」と積極的に誘った。私立の一貫校で育ったことや家庭環境などが自分と似ていて、自宅も近そうなところに縁を感じたからだ。
「実際に会った純一さんはアプリの写真よりもはるかにすてきでした。頭頂部がカッパのようにはげていますが、目がキレイだし、口角も上がっています!」
純一さんの第一印象を興奮気味に語る博美さん。彼のほうも博美さんに一目ぼれしたようだ。
「純一さんはちょっと変わった人で、世の中のすべてのことは合理的に説明できる、プログラミングされているんだと主張しています。でも、初めて私の姿を見て『この人だ!』と思ったことは合理的に説明できないそうです。
それまでは女性から言い寄られて好きでもないのに付き合ってきたけれど、私のことは初めて好きになったと言っています。空気が読めずに人付き合いが苦手な彼は、一生懸命に私を喜ばせようといろんなチェーン店に連れて行ってくれます。初デートはロイヤルホストでした(笑)。ロイホをレストランと呼んでいるところが素朴でいいなあ、と思っています」
現状を打破する努力を続ける純一さん
心温まるエピソードではあるが、前夫による痛すぎる体験を聞いた後だと少し心配になる。純一さんも博美さんに自分勝手な理想の女性イメージを押し付けているのではないか、という不安だ。
ただし、前夫と純一さんは謙虚さが大きく異なる。前夫は自らの力不足を認めずに博美さんに暴力を振るって現実逃避をした。それに対し、純一さんは人の気持ちを理解するための本を読むなどして現状を打破する努力を続けている。博美さんもその姿を認めて応援している。
「風俗の仕事をしていたことも話してあります。彼が以前に付き合っていた女性も風俗で稼いでいたらしく、その人の場合はブランド物を身に着けるためのお金だったそうです。『だから抵抗はない。とくに、君の場合は仕方なかった。うんと苦労したから、これからはうんと幸せになるよ』と言われています。彼、やっぱりどこかズレていますよね(笑)」
2人が結婚式後も別居を続けている理由は何か。純一さんは亡き祖母から引き継いだ古い一軒家で1人暮らしを続けているが「ゴミ屋敷」で、博美さんは一度も入れてもらったことがない。離れて暮らす母親も純一さんと似た性格で、よくも悪くも息子を放置している。
博美さんには純一さんと落ち着いて2人で暮らしたいという願望はあるが、母子家庭の枠で病気がちな娘と団地住まいをしているという事情がある。
前述したように、2人は歩いて行き来できるくらいの距離に住んでいるので、当面は別居婚で幸せなのだろう。ただ、口げんかをしても一晩寝て顔を合わせたら、自然と仲直りしているような近い距離感は、家族ならではの醍醐味でもある。博美さんと純一さんが一緒に暮らせる日が早く来ればいいと思う。
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