経済的に見て、これまで新型コロナウイルスの問題は、主として実物経済の需要と供給両面での急ブレーキだった。世界的な移動の制限、さらにはロックダウン(都市封鎖)、自粛要請、等々によって、製造業で生産が滞ったり、観光・外食・小売などの業種では需要が消滅したりという、急激な悪影響が発生した。サービス業でも、人と人との接触が制限されてビジネスが成り立たない場面が増えている。
今や予想数字にどれくらい意味があるか疑問もあるが、IMF(国際通貨基金)は今年の世界のGDP成長率予測をマイナス3%と発表した。この大恐慌以来となる経済活動の縮小は由々しき事態で、「リーマンショック級」あるいはそれ以上だとも言える惨状なのだが、実は、それでは終わらない可能性が考えられる。
「リーマン級経済悪化」にさらなる「リーマン級の圧力」
リーマンショックや、同類の事態として日本のバブル崩壊では、金融的なトラブルが信用収縮を招いて実物経済に悪影響を及ぼしたのだが、今回のコロナ問題は、いきなり実物経済にブレーキが掛かった点にちがいがある。
リーマンショック後の金融規制の強化の功もあって、銀行は自己資本比率を高めていてかつてよりもリスクに強い財務体質を持っている。だが、それでも融資や投資の対象である実物経済の側の傷みが想定を超えた場合、経営破綻する場合があってもおかしくないし、ピンチの金融機関は信用供給を縮小するので、金融が実物経済に悪影響を与えるリーマンショック的波及回路が動き出す可能性がある。
つまり、リーマンショック級の経済悪化が既にあった状況に、「追加で」もう一つリーマンショック級の不況へ圧力が加わる可能性が否定できないということだ。
先進国各国は、金融・財政両面から「なんでもあり」に近い対策を講じているので、金融機関の破綻は起こらないかも知れないが、「起こしたくないものは、起こらない」とまで言い切れないのが、現実の怖いところだ。
4月20日以降の内外の株価下落は、主に原油価格の下落から金融発の2次被害の発生を懸念したものと解釈できる。
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