企業・個人へのコロナ補償が曖昧すぎる大問題 緊急事態宣言で浮き彫りになる補償の曖昧さ

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まず、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」ですが、本来は事前に計画書を提出してからテレワークを開始しなければならないのですが、コロナ対応の特例で、事後の計画書提出を認めるなどの柔軟な対応を取っています。

しかし、この助成金は、ノートパソコン、タブレットなど、企業側のニーズが高いと思われるハードウェアの購入費用が、助成金の支給対象になっていないことがネックです。

また、助成金の対象範囲が、テレワーク制度を「新規に」導入する企業に限定されているので、すでに一部の部署でテレワークを導入済みの企業が、コロナを機にテレワークを全社に拡大するような場合には対象外になってしまうこともネックとなる場合があるでしょう。

東京都の場合

東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」の場合は、ノートパソコン、タブレットなども含め、テレワークに関連して発生する費用を幅広く対象にしていることや、テレワークの「新規導入」「拡大」いずれの場合であっても助成金の支給対象になることが魅力的です。

しかし、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」は、計画届けの事後提出を認めていないので、まずは計画書を提出して、審査を受け、審査に合格して計画書の認定を受けたうえで助成金の対象となる機器を購入したり、クラウドサービスを契約したりしなければなりません。そのため、助成金を利用することを前提にした場合、実際にテレワークを開始するまでには、1~2カ月を要してしまいます。

国や地方公共団体が、コロナ対応として、テレワークを促進する助成金を用意してくれているのはありがたいことですが、実務の現場では、助成金の対象範囲や、支給決定されるまでのタイムラグに課題があるように感じます。

筆者も、実際に複数の企業から、「助成金の審査を待ってテレワークへの移行を留め置いたら、従業員をリスクにさらしてしまうので、今回は助成金の利用を断念し、自腹でテレワークに必要な投資を行うことにした」という話を伺いました。

資金力に余力のある企業ならばいいですが、助成金を活用しなければテレワークに移行することが難しい企業にも、テレワークへの迅速な移行を促し、従業員の生命と健康を守るためには、国の助成金と東京都の助成金のいいところを合体させたような、「事後申請が可能で、支給対象となる範囲の広いテレワーク助成金」の創設が望まれるのではないでしょうか。

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