不正受給を防止する観点もあり、助成金の支給要件は非常に細かくなっているため、ちょっとした不注意や勘違いで、本来であれば助成金を支給するに値する申請書が、不支給扱いになってしまうこともあります。
事業主が休業手当の支払いをためらう理由の1つとして、「雇用調整助成金を本当に自社で受給できるのだろうか」という不安を感じていることも影響していそうだというのが筆者の実務感覚です。
厚生労働省も、このような状況を受け、4月10日に、申請書類の簡素化や一部の添付資料の免除など、雇用調整助成金の支給申請に、一定の見直しを行いました。しかしながら、その見直しを踏まえても、雇用調整助成金の仕組みそのものが複雑であるので、事業主の方にとっては、まだまだ支給申請のハードルが高いと思います。
計算や手順が複雑
例えば、雇用調整助成金の支給申請額がいくらなのかを算出して申請書類に記入すること1つをとっても、「労使協定を結んで休業手当の支給率を決めたうえで休業をさせ、前年度の労働保険料の賃金総額を平均労働者数と所定労働日数で除して、それに係数をかけて……」というような複雑な計算や手順が必要です。
思い切って、「Aさんに休業手当を5000円支払ったなら、その90%の4500円を国が支払います」というように、誰が見ても即座に理解できる、単純明快な制度にすることが望ましいのではないでしょうか。
そうすれば、申請書類は極めてシンプルになり、事業主が雇用調整助成金を利用する心理的ハードルが下がります。かつ、審査もスムーズになり、現状の、助成金の申請から入金まで1カ月~数カ月かかるという審査スピードも、大幅に改善されることが期待できます。
とはいえ、現実問題として、雇用調整助成金の仕組みを今日明日でガラッと変えることは難しいかもしれません。そうであったとしても、事業主の資金繰りを助けるため、せめて、助成金の仮払いのような制度は導入してほしいものです。
第3の問題点は、テレワーク関係の助成金が、コロナ対策としてのテレワーク移行支援に直結していない可能性があるということです。
通勤やオフィスでの感染リスクを下げるため、国や地方公共団体は、事業主に対してテレワークの積極的な活用を呼びかけています。これを受け、企業がテレワークを活用できるよう、厚生労働省は「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」を用意しています。
この動きは地方自治体にも広がり、例えば東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」のように、独自のテレワーク支援助成金を打ち出している地方自治体もあります。
この助成金を原資として、事業主はテレワークに必要な機器を購入したり、クラウドサービスを契約したり、専門家からのコンサルティングを受けたりすることができます。
ですが、実際にテレワーク関係の助成金を活用しようとすると、気になることがいくつかあります。
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