中国入国「2週間隔離」された日本人の悪戦苦闘 中国政府は外国からのコロナ感染拡大を懸念

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さらに省都のハルビン市では3月19日にアメリカから帰国した大学生が50人のクラスターを形成した。この大学生は自宅で隔離し、隔離解除数日前のPCR検査では陰性だったが、その後の抗体検査で感染歴があるとの結果が出た。

帰国時にはすでに感染しており、自宅隔離中に階下の住人にエレベーターで感染させたと推定され、無症状の住人から2つの病院も巻き込んで50人に感染が広がった。ハルビン市は学生を施設ではなく自宅隔離にした点を責められ、幹部ら18人が処分されている。

また、広州市ではナイジェリア人が多く住む地域でアフリカ系住民のクラスターが発生し、アフリカ人が住居や商業施設の退去を迫られるなど、差別・排除行為が深刻化している。

コロナ第2波を何としても避けたい中国

入国者クラスターへの警戒感から、4月中旬以降、「隔離証明書」がないと外国人の立ち入りを許さない施設や工場が出てきた。北京市も、市外から入った人に対し、7日以内に発行された「PCR検査陰性証明書」を提示しないと宿泊施設の利用を認めないと発表した。居住区で証明書を発行してもらえない場合、北京の施設で検査を受けられるという。

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感染抑止と経済活動の両立は、今後世界中が取り組む課題になる。中国もいつまでも入国禁止を続けるわけにはいかないが、第2波は何としても避けたい。マスクが外出のスタンダードとなったように、地域をまたいだビジネスをする人にとって、今後は「PCR検査陰性証明書」がパスポートのような存在になるのかもしれない。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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