その後、松井さんと小学生の娘たちは他の搭乗客と一緒にホテルに移送された。各フロアの隔離者はメッセージアプリのウィーチャット(微信)でグループを作り、当局の情報もチャットで通知された。隔離費用は自費負担だ。3食付きで1部屋300元(約4500円)の基本料金に子供2人の食費が120元(約1800円)追加され、1日420元(約6300円)、14日分を請求されたという。
「27日夜にホテルに着いて、最初の食事が28日昼まで提供されなかったので、グループチャットは『飯を食わせろ』『飯はまだか』のメッセージだらけになりました。翌日支給されたご飯も正直まずくて、味が濃く、うちの娘は食べられなかった。さらに、唐揚げが3つ入っている人と1つしか入っていない人がいて、今度は『飯がまずい』『飯をちゃんとしろ』との不満がチャットに殺到し、途中で弁当業者が変わりました」(松井さん)
隔離先のホテルでも混乱は続いていた
食事の質に耐えきれず、出前アプリで近くの食堂から注文する人も現れた。運ばれてきた料理は、当初はフロントに放置されたが、注文した人が何度もホテルに交渉して部屋まで持ってきてもらった。それを知った他の人々が「1人だけずるい」と次々に注文し、松井さんも飲食店から料理を宅配してもらった。部屋に届けてくれたホテルのスタッフには「本当は禁止ですから。今回だけですよ!」と釘を刺されたという。
「でもホテルのスタッフとも、顔を合わせるうちに、だんだん仲良くなって、こっそりスーパーで飲み物を買ってきてほしいと頼んだりもしました。もちろん相手の余裕とか機嫌をみながら、本当に必要なときだけですけど」(松井さん)
隔離先の窓からは、ほかにもホテルが5、6軒見えたが、そのすべてに防護服姿の人が出入りしていた。一帯すべてのホテルが隔離用に借り上げられていたのではないかと、松井さんは推測している。隔離中、松井さんはテレワークで仕事をして、娘たちはオンラインで習い事や塾の授業を受けた。大連での隔離生活に備えて持ち込んでいたNHKの朝ドラ「マッサン」のDVDも上海でのホテル生活で全話見たという。
困ったのは、着替えがなかったことで、毎日洗濯をして、同じ服を着続ける羽目になったそうだ。そうやって2週間をしのぎ、隔離12日目のPCR検査で陰性との結果が出た松井さんらは、ようやく大連の自宅に戻ることができた(大連でも隔離騒動が起きたが、ここでは割愛する)。
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