「本来は直行便が再開する3月29日に大連に戻る予定でしたが、3月26日夜に、中国政府が28日から外国人の入国を拒否するとの発表があり、慌てて航空券を取り直しました」
そう話すのは、中国にある5つの工場で味噌や調味料を生産する、食品メーカー松井味噌(本社・兵庫県明石市)の松井健一社長だ。1月下旬に武漢からチャーター便で日本人が帰国していた頃、大連に生活の拠点を置く松井さんに日本人学校関係者から「早めに帰国したほうがいい」との情報が回ってきた。
松井さんは中国人の妻を現地に残し、3人の娘を連れて2月に一度日本に帰国した。だが日本におけるコロナの感染拡大も深刻で、学校も休校となったため、松井さんと娘たちは3月に再び中国に戻ることにした。
ところが松井さん一家が中国に戻る準備を進める一方、今度はウイルスの逆流が中国を脅かすようになっていた。中国では2月に、「新型コロナウイルスの4月末終息」という目標を掲げ、2月下旬以降は短期間で感染者が急減した。
しかし終息へのカウントダウンが始まる中で、武漢以外でクラスターが散発的に発生。少しでも漏れがあればウイルスがあっという間に広がることも、改めて実感されている。
行き先が急遽変更され上海で隔離生活
そんな中で松井さんは日本から、一旦オフィスと家がある香港へと移動。その後、香港―大連の直行便が再開する3月29日に大連に戻ることにした。だが3月28日以降、中国で外国人の入国を一律拒否することが決まったため、慌てて上海経由で大連に向かうチケットを取り直したのだ。
3月27日、上海で飛行機を降りた松井さん一家が「乗り継ぎ」と書かれた方向へ歩いていると、空港職員に「こちらに来ないで」と止められ、「あなたたちは上海で2週間隔離されます」と告げられた。松井さんが「大連行きのチケットをすでに予約しているのですけど」と空港職員に訴えると、「大丈夫です。それは取り消しましたから」と問答無用だった。
「私は早々に諦めたけど、空港はあっちこっちで怒声が飛び交って暴動寸前でしたよ」と松井さんは振り返る。その一方で、松井さんの次の不安は、「上海で2週間足止めされて、大連でまた2週間隔離されるのか」ということだった。その場にいた職員に聞くと、「2週間先のことなんて、わかるわけがないでしょう」と言われて、「たしかにそれもそうだな」と松井さんは納得した。
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