松井さんの体験からもわかるように、中国が水際対策にかける労力も相当なものだ。中国では3月28日に外国人の入国を一律拒否し、松井さん以外にも多くの日本人が翻弄された。
日本の大手メーカーの社員で広東省・広州市に駐在する瓜田さん(仮名)は、2月中旬に会社から帰国を命じられ、1カ月余りを東京のホテルで在宅勤務をしていた。その後、中国の経済活動が再開し、日本でも年度が替わるタイミングであったことから、会社から3月最終週に中国に戻るよう指示が出て、26日に瓜田さんは広州に戻った。
瓜田さんは広州に到着後、指定ホテルでPCR検査を受け、翌日から自宅隔離となった。最後にもう一度PCR検査を受けて、陰性との通知とともに、隔離を解除された。4月10日にようやく外に出られるようになった瓜田さんは「当社は中国駐在員が50人ほどいますが、入国できた中で私は最後の1人でした。半分以上の駐在員が28日以降の航空券を取っていたため、中国に入れなくなってしまいました」と漏らす。
各地で発生する入国者クラスター
一方で、国とは別に、各省・市も独自の水際対策を取っている。上海市は3月23日、日本からの入国者を隔離対象から除外したが、26日には「国を問わず一律隔離」に切り替えた。松井さんは水際対策が再強化された後に上海に入ったため、乗り継ぎにもかかわらず隔離された不運なケースだが、隔離対象から外れた「奇跡の3日間」に日本から中国に入国した人も、しばらくしてから予期せぬ壁にぶつかることとなった。
3月25日に上海に入国した谷さん(仮名)は、PCR検査を受けただけで、それ以降何の制限も受けなかった。陰性との連絡も、谷さんが問い合わせるまで来なかったという。「ラッキー」と思っていた谷さんだが、4月に入って再び状況が変わった。「隔離証明書」を提示しないと入れない施設が出てきたのだ。
中国での感染者がゼロに近づく中で、隔離政策が厳格化されている背景には、海外からの「入国者クラスター」にある。ロシアとの国境、黒竜江省では、ロシアからの帰国者から数百人規模の感染が確認され、コンテナ病院が作られた。
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