「パン消費量日本一」京都人の意外すぎる食事情 「進々堂」「SIZUYA」など名物店の魅力も紹介

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SIZUYAでは、ご当地パン「ニューバード」についても語らねばなるまい。これは揚げパンである。コッペパンの生地にカレー粉を混ぜ、中心にウィンナソーセージが貫いている。このパンの名は、京都に以前存在した「バード」というパン屋チェーンの売り物だったことからきているらしい。「バード」は市内に66店舗あったが、倒産してなくなったという歴史も噛みしめて食べよう。「カルネ」も「ニューバード」も軽い味わいで、強烈な印象を残さないが、ソウルフードとはそういうものなのかもしれない。

京都のパン店は、喫茶店やカフェと切り離せないが、京都イコール「イノダ」というくらい「イノダコーヒ」は有名で、本店、三条店などのほか、京都駅の南北に二店舗設けて観光客を集めているが、近所に住む常連以外、地元民はほとんど行かなくなっているようだ。それでも京都通の本では、いわゆる「旦那衆」の行きつけだとか書かれている。

以前、文芸編集者だったころは、京都に来るとイノダは外せない項目だったが、京都生活4年間のうち、三条店に妻と1回行ったきりで、それもめったに京都に来ない妻の希望に従ったまでのことである。「にわか」でも、京都人はもう行かないのだ。

京都人が「パンをこよなく愛する」理由

さて、京都人がパンをこれほどにも好むのは、どうしてだろうか。「京都人は新しいもの好きだから」という意見も確かにある。しかし、パンが新しい食材だったのは100年も前のことだろう。

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1つには、コーヒー店や喫茶店の多さということがある。歴史的には最初のコーヒー店が生まれたのは、京都よりも東京のほうが古いようだし、現在のコーヒーの消費量も、京都は全国で1位、4位などと調査によって差があるが、いずれにせよ屈指の消費県であることは間違いがない。

コーヒーや紅茶のお供は、やはりご飯というよりパンになるだろう。先に書いた寺町通の人気店「スマート珈琲店」は、子供のころの美空ひばりがここのホットケーキを愛好していたということからいまだに人気がある。

いつ覗いても、順番待ちの観光客が店前で行列を作っている。2階はレストランになっていて、ご飯類のメニューもある。一度だけ入ってコーヒーとホットケーキを味わったが、まあ、こんなものだろうという程度の感想ではあった。

素朴、レトロ。しかし、こうした老舗が、パン食を定着させることに多大な貢献をしたことは間違いがない。京都のパン食は、喫茶店数の伸長とともに育ったのである。

校條 剛 文芸評論家

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めんじょう つよし / Tsuyoshi Menjo

1950年、東京都荻窪生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。1973年、新潮社に入社。「小説新潮」編集長、「新潮
新書」編集委員などを経て、2010年に退職。2014年から2019年まで京都造形芸術大学文芸表現学科教授。2019年より京都文学賞選考委員。日本文藝家協会会員。2007年、『ぬけられますか―私漫画家滝田ゆう』(河出書房新社)で大衆文学研究賞を受賞。他の著作に、『ザ・流行作家』(講談
社)、『作家という病』(講談社現代新書)などがある。

 

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