ワシントン・ポスト(電子版)は4月14日、新型コロナウイルスによるパンデミックからさかのぼること2年、2018年にアメリカの外交官が武漢ウイルス研究所を訪れた結果、研究所の管理運営体制に安全面で問題があるという内容の公電を本国に送っていた、と報じた。
報道によると、3回にわたって研究所を訪れたのは、武漢の総領事と、在北京アメリカ大使館の環境・科学・技術・健康担当参事官。ワシントン・ポスト紙が入手した2018年1月19日付の公電は「研究所の科学者らとやりとりしたところ、新たな実験施設は深刻な人材不足にあることに言及した。高いレベルの封じ込めを行う実験施設を安全に運営するために必要な適切に訓練された技術者や研究者が足りないということだ」としていた。
もっとも、大使館員らが研究所を訪れたのは、アメリカ・テキサス大学医学部の研究所をはじめアメリカの機関が研究所に対する財政的支援を行っており、さらなる支援を研究所が求めていたからだ。公電は、「コウモリのコロナウイルスについての研究は重要だが同時に危険でもある」ため、さらなる支援が必要だと結論づけていた。
トランプ政権の発信により増幅された疑惑
ワシントン・ポスト紙の報道があった14日、アメリカ国防総省の定例会見で、マーク・ミリー統合参謀本部議長は「(中国・武漢での新型コロナウイルスの感染発生は)自然発生的なもののようだが、確かなことはわからない」と述べた。
翌15日、FOXニュースは情報筋の話として、武漢ウイルス研究所のスタッフが研究用のコウモリから新型ウイルスに感染したことが感染拡大の始まりだったとする見方を伝えた。
中国側は「科学的根拠がない」と疑惑や指摘を一蹴。武漢ウイルス研究所研究員は中国国営の中国中央テレビ系の取材に対し、「厳格な管理により運営されている」「所員に感染者はいない」と話した。一方、トランプ大統領は18日の記者会見で、武漢ウイルス研究所に向けられた疑惑に触れて、「故意があれば、相応の報いを受けるべきだ」と述べ、調査や責任追及に意欲を示した。
トランプ政権が最近、武漢ウイルス研究所をめぐる疑惑についてさかんに発信していることについては、新型コロナウイルスの感染拡大への対応に遅れたことへの批判をそらすためである、という見方はアメリカ国内外に広がっている。
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