腕力に替わるマウンティング手段としての消費 消費行動の裏にある地位への異常なこだわり
人類出現以前の順位制によって、私たちは社会的地位を過度に気にかけるようになった。
自分を他人と比較する癖は、覇権を競う動物がお互いの腕力を評価して、闘うべきかそれとも譲るべきかを決める対決と同じくらいに、古い時代から続いている。序列社会における自分のランクほど重要なものはない。
現代社会の消費行動を牽引しているのは社会的なステイタスへのこだわりだ。自分の地位の評価となるものならどんな些細なことでも見逃すことができなくなり、消費行動は、腕力以外にステイタスの向上を目指す闘いの場となった。
社会全体の所得不平等の影響を研究する場合、難問は人々が自分を誰と比較しているかである。相対的な貧困の研究から得られる共通の結論は、人々が自分を比較する対象は、社会階層の上でも下でも、遠く離れた人々でもない。人々は自分と同類、つまり近所の人や職場の同僚を比較の対象としているのだ。
序列7位のヒヒは、1位や12位のヒヒと闘わない
中間層の大多数の人間にとって、極端な富裕者や貧困者は重要ではない。最富裕層と最貧困層の所得格差が大きな社会問題であり、社会的な機能不全の原因になっていると指摘されるが、事実と矛盾するように見える。
この謎を再び進化論的な視点から見ると、矛盾は見事に解決する。ロバート・サポルスキーは約25年間、毎年、ヒヒの研究でアフリカのセレンゲティを訪れてきた。彼によれば、身分の優劣を巡る闘いは序列が極めて近いもの同士で行われる傾向がある。
それゆえ、序列7位のヒヒは、序列6位や8位のヒヒと争うが、序列1位や12位のヒヒと闘うことはない。序列7位のヒヒは1位のヒヒと闘っても負けることを知っているので、無駄な闘いはしない。同様に、序列20位は7位と争わない。全く勝負にならないことを知っているからである。
序列をひっくり返せる可能性が出てきた場合、自分の周辺にいるライバルに出し抜かれないよう絶えず警戒しなければならない。もし序列変動の兆しが出てくれば、7位のヒヒは6位と8位のヒヒに対し注意を怠らないようにしなければならない。
もちろん、序列がずっと上のヒヒや、逆にずっと下のヒヒが重要でないと言っているわけではない。高序列者の優越性を認めることは、低序列者の生き残りにとって不可欠である。そのために、人類以外の霊長類は高序列者に対して警戒を怠ることがない。