腕力に替わるマウンティング手段としての消費 消費行動の裏にある地位への異常なこだわり

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人はなぜ序列に過剰なこだわりを持つのでしょうか?(写真:tadamichi/iStock)
所得格差が大きな社会では、人々はより強くストレスを感じ、不平等は人々の心に悪影響を及ぼす。いち早くそのことを指摘し、全英ベストセラーとなった『平等社会』。
同じ著者たちの待望の続編『格差は心を壊す 比較という呪縛』がこのほど翻訳出版された。この新刊では、不平等が私たちの心をどう蝕んでいくのかを解き明かしている。500超の文献と国際比較データを駆使して書かれた本書の一部を、全4回に分けて抜粋・編集して紹介しよう。第2回目のテーマは、人はなぜ序列に過剰なこだわりを持つのかである。

出会って1分で相手の支配意欲がわかる

社会的地位を巡る競争は、序列への過剰なこだわりに基づいており、社会階層の下位の人間に対する偏見の源にもなっている。

『格差は心を壊す 比較という呪縛』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

人類以外の霊長類では、どの個体も下位者をどう扱おうが何のとがめも受けることはなく、それが上位者のあるべき姿となっている。したがって、序列の上位者の不興を買うことなく自分の地位を向上させるのは、困難を伴う。

序列の厳しいサル社会では格下のサルは格上のサルの居場所や機嫌のチェックに万全を期すが、順位制の心理的な影響の大きさは、それに費やす時間の長さを見れば明らかだ。

逆に言えば、グループの格上のメンバーは、どのサルが他のサルから最も注目されているかを見ればすぐに発見できる。こうした警戒心は恐怖や争いを避ける必要性からきているが、格下のサルが最も注意するのが、群れの中で攻撃性の強いサルであることからも確認できる。

人類は現在でもお互いの優れた特性を見極める能力に長けている。

実験のために準備された環境で、少人数の学生がお互い初めて出会い、そこで彼らが相互にどのようなやりとりをするかを観察した研究がある。一目見てすぐに、つまり出会いから1分も経たないうちに、あるいは互いに会話を交わす前の動作や表情などから、お互いがどのくらいの支配行動の持ち主であるか無意識のうちにわかってしまうことが明らかになっている。

こうした評価は、その後の言動の観察によって間違っていなかったことが確かめられた。研究者の結論によれば、初対面の時点から、相手の支配行動を知るうえで重要な手がかりになるのは、どのくらい自信がありそうに見えるか、どのくらい積極的か、目を合わせたときに視線をそらすか、などである。

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