腕力に替わるマウンティング手段としての消費 消費行動の裏にある地位への異常なこだわり

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おそらく以上のような理由から、友人や同僚が突然、自分よりも目上の人間であるかのように話し、行動し始めたときに、人には、「いったいお前は自分を何様だと思っているのか」という怒りがこみ上げてくる。

不平等な社会ほど暴力行為が増えるのは、全く同じ理由からだ。貧困者が富裕者を攻撃する頻度が高まるからではなく、社会階層の底辺にいる人々の間での暴力が増えるのだ。

社会的なステイタスの持つ意味が高まれば高まるほど、同じ立場の人間からバカにされたと感じ、侮辱を受けたときは(勝手にそう思い込んだ場合も)、自分の立場を守ることが必要になってくる。

社会的なステイタスへの不安は、他人が自分をどう見ているか、つまり他人から見下されているのではなく、好感をもたれているか、尊敬されているかという点に尽きる。その結果、人々は自己顕示欲にとりつかれたようになり、外見的なイメージや評価を高められますと宣伝する広告主の虜になってしまう。

なぜ人類は平等主義を必要としたのか

社会的な不安への脆弱性、つまり他人の目を通じて自分のことを眺めたり、知ったり、経験する傾向の第2の淵源は、先史時代の平等主義である。仲間外れにされたくないとか、人から好かれたい、評価されたいという感情は、農業社会になる前から続いている。

動物の場合、肉体的腕力の優劣が決定的だったが、人類が平等主義を必要としたのは、誰もが危うい立場にあったからだ。最強者から最弱者まで、いつ誰から襲われてもおかしくないという恐怖心であり、それは大型動物の狩猟技術の発達でますます強まっていった。

その結果、集団のすべてのメンバーは他のメンバーすべてと良好な──あるいは寛容な──関係を維持することが不可欠になった。お互いの争いを避けるためだけでなく、グループから仲間外れにされないことも重要になった。グループは、協調してお互いの身を守り、食料を分かち合うための手段であったからだ。

いかなる個人の権力欲求も、個人の自律性を尊重し、権力から身を守ろうとする他のメンバーの団結した行動によって阻まれてきた。ヒヒやマカクの世界では、トップのリーダーを追放するために幹部クラスが数匹集まって同盟を組むことがある。

それと同じように、原始の人類の社会も、独裁的な個人に対しては全員が団結して対抗する機能が働いていたと考えてよいだろう。これは文化人類学者のクリストファー・ボームが到達した結論である。

現代の市場社会の特性ゆえに、私たちは利己的で、所有欲が強く、自己中心的で、社会的地位を求めたがる反社会的な傾向が強まっている。しかも、私たちは自分の中に分かち合いや協調という性格が組み込まれていることを信じなくなっている。

だが初期の人類社会や人類以外の霊長類の一部の社会的行動を踏まえると、私たちのこうした自己認識は修正しなければならない。
 

リチャード・ウィルキンソン 経済学者、公衆衛生学者

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Richard Wilkinson

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済史を学び、後に疫学を学ぶ。ノッティンガム大学メディカルスクール名誉教授、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授。著書に『格差社会の衝撃』『寿命を決める社会のオキテ』など。ケイト・ピケットとの共著『平等社会』は『ニュー・ステイツマン』誌の「この10年に読むべき本トップ10」に選出され、20を超える言語に翻訳された。

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ケイト・ピケット 疫学者

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Kate Pickett

ヨーク大学健康科学学部教授、同大学未来の健康センター副所長。ケンブリッジ大学で形質(自然)人類学を、コーネル大学で栄養学を、カリフォルニア大学バークレー校で疫学を学ぶ。『平等社会』共著者のリチャード・ウィルキンソンとともに、英国の不平等を解決するための組織イクオリティ・トラストを設立する。

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