アメリカのSNSでは、「孤独な食パン」「隔離クッキー」などの写真であふれている。3月半ばから、小麦粉やイーストなどのパンの材料は、インターネット通販のベストセラーになったり、売り切れているのだと同紙は伝える。
また、3月27日配信のワシントンポストの記事は、ストレス・ベイキングと買いだめのため、卵不足になった流通と産地の悲鳴を報じる。アメリカ最大の自然養鶏場のヴァイタル農場では、配信の前週に普段の1.5倍の出荷量となったことを報じた。
突然のブームに4つの理由
いったいなぜ、世界のあちこちでパンやお菓子を焼くことが突然ブームになったのだろうか。理由は、4つ考えられる。
1つは、巣ごもり時間を持て余す料理好きにとって、ちょうどいいヒマつぶしになることだ。毎日家にこもって過ごすのは退屈で、何かして体を動かしたくなる人は多いだろう。そんな人に、パン作りはうってつけの作業だ。材料をこねるのは時間がかかるし、力が必要な場合もある。
しかも、パンは30分から1時間程度の発酵時間が2回必要という、作るのに時間がかかる発酵食品である。普段なら簡単なものしか作らない、食事として必要不可欠なものしか作らない人でも、巣ごもり生活の今は、時間をつぶすためにもやってみようと思えるのではないだろうか。そして、腕に覚えがある人なら、この機会に面倒くさいレシピに挑戦すれば、達成感がより大きくなる。
2つ目は、こねる作業に癒されることだ。子どもが粘土遊びを喜ぶように、園芸好きな人が土いじりで癒されるように、粉を触りこねていく作業は心地よく、雑念を忘れて没頭することができる。つまり、コロナに関わる不安やいらだちから離れ、落ち着く時間を持てるのだ。パンは発酵食品なので、生きているものを触る喜びを感じる人もいるかもしれない。
3つ目は、うまくできればおいしく、家族も喜ばせることができること。パンは、日米どちらの国民にとってなじみの食品である。
4つ目は、自分で作って完成させる喜びだ。コロナの脅威は、終わりの時期が見えず、次第に長期化している。政府の動きはあまりにも遅いし、仕事を失った人、減った人もたくさんいる。
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