日本の働き方をひっくり返した起業家の熱情 「地位やお金じゃない」サードドア開く爆発力

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さらにここ2年は、男性の育児休暇取得の義務化を政府に働きかける活動を行っていますが、これに関しても、思いつく限りのたたけるドアはすべてたたいてきました。

サードドアは地道な活動でこそ開く

実は、産後の妻の死因の1位は「自殺」なんです。「産後うつ」が主な要因なのですが、その産後うつは、産後2週間から1カ月がピークです。この時期に夫が休みを取って、夜泣き対応なども協力しながら妻が孤独にならない状況を作ることができれば、自殺は防ぐことができます。

諸外国では「子どもの権利」の観点から、子どもは父親・母親両方の愛情を受けて育つ権利があり、父親の育児休業の取得が義務付けられています。

男性が育児休業を取得すると、そのあと、1日当たりの家事育児参画時間が25分増えることがわかっています。さらに家事育児参画時間が長い家庭ほど、第2子以降が生まれる割合が高いことも厚生労働省のデータで明らかになっています。

また、労働力として女性がネガティブに捉えられるのは、女性だけが育児で長期に休むからですが、男性も当たり前のように休んで子育てをする社会になれば、採用や登用の時点で女性だけが排除される状況を変えることができます。

もちろん男性も休みたくないわけではなく、男性が育児休業を取得すると左遷されたり、仕事を干されたりといったパタハラ(パタニティ・ハラスメント)が後を絶たないことで、取得したくてもできないのです。この社会を変えるには、男性の育児休業を企業に義務付けるしかない。そう思っているんです。

そのために、とにかくやれることは何でもやるという気持ちで、「どうすれば法改正ができるのか」ということをずっと考え続けてきました。自分なりに法改正の案を書いては、機会を見つけて政治家に提言に行きました。

一方で「男性育休100%宣言」というサイトを立ち上げて、そうそうたる企業に経営者に直談判して、自社で男性育休者が100%になるためにアクションすることを宣言していただいたのです。現在では82社の経営トップが宣言しています。

こうして企業の流れを動かしながら、メディアにも働きかけて、女性記者の皆さんと勉強会を開催し、男性の育児休業の義務化が大事だという論点を、さまざまな媒体で取り上げてもらって世論を動かしていきました。

すると、問題意識を共有する議員が増えていき、なんと保守的と言われる自民党の中に、男性の育児休業推進のプロジェクトチームが立ち上がり具体的な法案を議論し始めました。

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