日本の働き方をひっくり返した起業家の熱情 「地位やお金じゃない」サードドア開く爆発力

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資生堂は当時、育児休業者が日本で2番目に多い会社でした。その実績を生かして、スムーズに職場復帰するための育休期間の過ごし方というプログラムを作って、他社に広めたらどうだろう。そうすれば、BtoBのビジネスを展開できるんじゃないかと考えたのです。

プレゼン勝ち抜き戦だったこのコンテストで優勝し、入社2年目で本社の経営企画室に異動し、IT戦略担当として、育児休業者の復帰支援プログラム事業を立ち上げることになりました。

でも当時の資生堂は、新入社員の営業職は最初の10年間は支社勤務というのが普通でした。そんななか2年目で本社勤務をし、新規事業の立ち上げ責任者をする私は「なんだあいつ!?」という目で見られて、いつも四面楚歌でしたね。

それでも数年かけてようやくこのビジネスを黒字化して、評価もされるようになりましたが、そこでまた新しい課題が見えてきました。2005年頃のことです。

復帰支援で見つけた「長時間労働」という課題

当初私はこう考えていました。「女性が活躍できないのは、育児のために『休む』から。会社は、そうやって休む人は、採用も登用もしたくない。だから女性は組織において低く扱われてしまうんだ」と。だったら育休を企業にとっての「ブランク」ではなく、能力を磨き上げる「ブラッシュアップ」期間にすれば問題は解決するだろうと思っていたんです。

ところが、資生堂で開発した育児休業復帰支援プログラムをいろいろな会社さんに導入していただいてわかったのは、せっかく復帰できるようになったのに、結局、多くの女性が復帰後に退職してしまったということでした。

実はここに「長時間労働」という問題が隠れていたんです。長時間労働が当たり前の会社では、女性は復帰しても周りの人と同じように長時間は働けない「短時間労働の使いづらい人」になるために、周囲から煙たがられてしまう。成果を上げていても、時間が短いことを理由に評価も落とされてしまうので、本人のモチベーションも低下していき、結局辞めてしまうのです。

周囲のみんなが「エンドレス勤務」をしているから、一部の「時短」の人は、企業からするととても使いにくい存在だと思われていたんです。

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