孫正義、「1兆3500億円赤字」に立ち込める暗雲 2号ファンド組成不能に、注目の5月18日決算

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SBGはIFRS(国際会計基準)を採用している。IFRSでは、期中に非継続事業とみなした事業の売上高を期初にさかのぼって取り消すルールになっている。Tモバイルとの合併が完了していない2019年4〜12月期までは、SBGの売上高にスプリントの売上高を計上してきた。

しかし、Tモバイルとの合併が確実になったため、2020年3月期の期初にさかのぼってスプリントの売上高を連結から外した。ちなみに2019年3月期の決算数値からスプリントの売上高を除くと、2020年3月期は前期比で564億円、0.9%の実質増収となる。

ウーバーやウィーで巨額損失

一方、1兆3500億円の営業赤字はソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の低迷によるものだ。通信子会社のソフトバンクとその子会社Zホールディングス(旧ヤフー)の合計で約0.9兆円の営業利益を見込むが、投資先の公正価値(上場企業は時価総額。非上場企業はキャッシュフロー予想などをもとに算出した金額)が激減し、約1.8兆円の投資損失を計上する。

投資損失の主因は、アメリカのウーバー・テクノロジーズの株価下落やシェアオフィス「ウィーワーク」を運営するウィー・カンパニーの価値下落とみられる。2019年4〜12月期に計上していたスプリントの営業利益(1378億円)は、非継続事業となったために計上しなくなったことも響いた。

巨額の営業赤字を計上するのに、税引前利益が2500億円の黒字となるのは、ひとえに中国のアリババのおかげと言ってよさそうだ。

ウィーへの投資や通信衛星ベンチャーのワンウェブへの出資などに関連して計8000億円の損失を計上したのに対し、アリババ株の先渡売買契約決済益が1兆2185億円あるほか、アリババが新株を発行したことに伴う持分変動利益3322億円(2019年4〜12月期)などで相殺できた。

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