孫正義、「1兆3500億円赤字」に立ち込める暗雲 2号ファンド組成不能に、注目の5月18日決算

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そして、純利益が7500億円の赤字になるのは、子会社のソフトバンクやZホールディングスで利益が出ていることによる法人税の支払いや少数株主持分の控除などが3618億円ほどあるためだ。

では、これだけの巨額赤字を計上して、SBGの財務体質は揺るがないのか。SBGの4月13日付けリリースは次の一文で閉じられている。

「なお、当社が従来から掲げているLTVや手元流動性に関する財務方針に変更はありません」

手元流動性は1.9兆円を確保

LTVとは「ローン・トゥ・バリュー」の略で、一般的に保有資産に対する負債の比率を指す。SBGでは、アリババなど保有している保有株式価値を分母、SBGの純有利子負債を分子(いずれも単体)にして比率を算出しており、2019年12月末時点で16.1%(分母の保有株式価値は29.9兆円、分子の純有利子負債は4.8兆円)。SBGは「通常時は25%未満で運営し、異常時でも上限は35%」としている。

新型コロナウイルスによる経済や市場の混乱を受け、足元の保有株式価値は減少しているとみられる。しかし、今回の巨額赤字の原因は投資先の評価損が中心であり、現金流出を伴ったものではない。したがって、新たに巨額資金を要する大型買収をしない限り、有利子負債が急に増える事態は想定しにくい。SBG広報部は東洋経済の取材に対し、「この市場環境下では当面投資を行わない」としている。

なお、手元流動性について、少なくとも向こう2年分の社債償還資金を確保しておく方針を持っており、2019年12月末時点で、2021年12月までに予定されている社債償還約1兆円に対し、同時点での手元流動性は1.9兆円あった。リリースの最後の一文は、その後巨額赤字を計上しても、これらの財務上の従来方針は維持されていると言いたいようだ。SBGの資本合計は2019年3月末で約9兆円ある。7500億円の最終赤字は巨額だが、ただちに債務超過に陥るわけではない。

くしくも新型コロナウイルスの感染拡大と軌を一にするように、今年に入ってSBGの財務をめぐる大きな動きが相次いでいる。子会社であるソフトバンク株式を活用した最大5000億円の資金調達(2月)や最大2兆円の自己株式取得と最大4.5兆円の負債削減を目的とした「4.5兆円プログラム」(3月)、ムーディーズの2段階格下げに対抗する形での格付け取り下げ(3月)などだ。

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