12月4日に配信した「最新版!これが『金持ち企業トップ500社』だ」ランキングには多方面から反響が寄せられた。企業の財務健全性を示す指標として、ネットキャッシュ(現預金+短期保有有価証券-有利子負債-前受金)が多い会社のランキングだったが、今度はその逆。手元資金に対して借り入れが大きい=ネットキャッシュのマイナスが大きい上場企業の上位500社を紹介しよう。
各社の財務諸表に記された各項目からネットキャッシュを割り出した。昨年同時期にも同じ内容のランキングを公表したが、その最新版となる。なお、自動車メーカーは自動車金融(ローン)事業を持っているため、ネットキャッシュを計算すると見た目のマイナスが大きく膨らみ、実態を正確に示せないため、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などは昨年に続いて今回もランキング対象外とした。金融系企業も原則除いている。
5年連続で借金王のソフトバンクグループ
1位は、ソフトバンクグループだ。ネットキャッシュは2019年3月末時点で11.8兆円(前年は13.7兆円)となった。2013年にアメリカの携帯会社、スプリントや2016年にイギリスの半導体設計大手、アーム・ホールディングスを買収したことが巨額負債の原因となっている。通信子会社のソフトバンクも2018年12月に上場している。
2019年は傘下のZホールディングス(ヤフーの親会社)によるM&A戦略が盛んだった。9月には前澤友作氏が率いたファッション通販「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ)を買収、さらに11月にはLINE(ライン)との経営統合も発表した。しかし、直近ではアメリカ発のシェアオフィス「ウィーワーク」の投資で巨額損失を計上し、同社の拡大戦略にはつまずきもみえている。
そのほか上位にはインフラ系や総合商社、不動産、鉄鋼メーカーなどいわゆる重厚長大産業が目立つ。ネットキャッシュのマイナスが1兆円以上は33社、同1000億円以上は171社だった。
ネットキャッシュのマイナスが大きいと財務の安全性が不安視されるかもしれないが、企業買収や設備投資など積極的な事業の拡大には投資が欠かせない。「マイナス金利」が導入され、歴史的な低金利が続く日本において、借り入れを活用し企業成長を目指すのは時流に合った経営スタイルといえる。無借金や自己資本比率の高さが必ずしも優良企業の証しとはいえないことを注意されたい。