消費税増税から2カ月余り、ビジネスパーソンの苦しい懐事情を尻目に、企業にかかる法人税は他国との国際競争という観点やさまざまな優遇制度によって引き下げられてきているのをご存じだろうか。日本を代表する大企業でも、利益を稼いでいるにもかかわらず、調整後の法人税額を低く抑えている企業も目立つ。
東洋経済オンラインでは、儲けているものの納税額が少ない企業を調査した。納税額は単年度の業績変動や企業買収のタイミングによってぶれがある。そこでランキングでは、過去3年間(2016年4月期~2019年3月期)の連結ベースの合計金額を用い、税引前当期純利益、当期純利益、調整後法人税額の3つの項目を調査した。
対象を相応の利益を得ている上場企業に限定するため、3年合計の当期純利益で300億円以上の企業を対象とした。調整後税負担率の計算には、調整後法人税額と税引前当期純利益を用いている。この調査では会計基準の変更は考慮していない。また、ランキングの社名はデータ作成をした2019年9月末時点の会社名に基づいている。
財務省の法人課税に関する基本的な資料によると、直近の法人実効税率(2018年度以降)は29.74%となっている。ランキングにしてみると、直近の法人実効税率の水準を下回る企業は277社あることがわかった。本記事ではそのうち、負担率の低かった150社をランキングにまとめて紹介する。ランキング上位では、3年合計の調整後の法人税額がマイナスの企業も4社あった。
ソフトバンクGの法人税支払いはなぜゼロになったか
ランキング1位はソフトバンクグループで、調整後の納税額は3年平均で約8236億円のマイナスだった。同期間の税引き前時点の当期純利益で2兆7884億円という多額の利益を得ていても、調整後の法人税額はむしろマイナスとなっているのは会計上の仕組みを利用したからくりがある。
2016年に半導体設計会社のアームを子会社化、中核事業を譲り受けたうえで、2018年にソフトバンク傘下のファンドにアームを譲渡した。この際、買収時と譲渡時において企業価値が大きく低下したことで会計上の損失が生じ、法人税負担が調整された。このスキームは一部で問題視され、財務省など当局が対策を検討している。
2位のファミリーマートの場合は、組織再編が絡んでいる。ユニーグループ・ホールディングスを吸収合併した時点では認識していなかった税効果を、ユニーの全株式を現在のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスへ売却した際に、欠損金の回収可能な額を追加で計上したことによるものだ。
ランキング上位には製薬会社や電機メーカーなど巨額の研究開発費を費やす企業も多い。こうした企業では研究開発減税の優遇制度を利用でき、一定額を法人税額から引くことが認められているので法人実効税率に比べた負担額が減っている。
今回の調査で、将来見通しの変化によって過去に計上した赤字の繰り延べ額の増減や組織再編に伴う評価の見直し、研究開発による優遇など、会計上の仕組みを活用することで、合法的とはいえ会計上の法人税の負担を抑えている上場企業が多い実態が浮き彫りとなった。
なお、このランキングで紹介したのは調整後の法人税などの財務関連の数項目に限られるが、このほかの財務指標を東洋経済では「財務データ・ダイジェスト版」として販売している。11期分の財務データが収録されている商品なので、過去からの時系列分析を行いたい方はこちらも検討いただきたい。
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