先生にも「おまえ」
メンバー同士のタメ口カルチャーはトレーナーに対しても同様だ。とりわけドイツでも盛んな柔道を見ると、日本との比較がしやすく、その特徴が明確に見える。
通常、練習前には先生と向き合って正座し、「先生に礼」と掛け声。一斉に礼をする。これはドイツでも一緒。わざわざ「センセー ニ レイ」と日本語でやる。だが、センセーとはトレーナーであり、基本的にはクラブのメンバーである。日本の感覚だと、先生には敬語を用いるものだが、ドイツではクラブメンバーなので当然、「おまえ」だ。
練習中でもトレーナーをつかまえて「ここのところをもう一度教えてくれる?」と頼むことがある。このときの二人称も「おまえ」だ。何よりもトレーナーの指導に納得がいかないと、ちょっとした議論がおこることもある。
いずれにしても一定の敬意はお互いに持っているのだが、柔道の流儀で「センセー ニ レイ」と言いつつ、ドイツには日本風の先生はいないのだ。
トレーニンング開始前の座り方にもドイツらしさが出る。上級者から順番に座るところまでは日本と同じだ。だが人数が多いために練習場の端から端まで一杯になったときがちがう。日本の場合2列、3列と座るが、ドイツの場合、端まで一杯になるとそのままアルファベットのL字型に座っていくのが主流。「上級者から座る」ということは行われるが、1列に座ることでメンバーの平等性を実現するかたちだ。(図1、2参照)
以上を見ると、柔道の流儀とスポーツクラブの理念が絶妙に組み合わさっているのがよくわかる。日本の柔道が「体育会系柔道」とすればドイツは「スポーツクラブ柔道」なのだ。
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