第4回 タメ口だらけのドイツ・スポーツクラブ
柔道でもフラットな関係

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「敬意」がポイント

ドイツのスポーツが「勝利至上主義」になりにくいのは、試合で勝つこと以外にも、多くの社会的価値をスポーツに期待し、実際に機能しているからだと思われるが、スポーツにおけるクラブメンバーの平等性の実現もそのひとつだ。

 もちろんドイツでも学校や職場でいじめはある。しかしスポーツの現場において日本のような社会的問題にはならない。そもそも年齢序列の感覚が少ないドイツ社会だが、スポーツクラブではフラットな関係をより強調する。これによって強い緊張感の伴う人間関係が生まれにくく、いじめも発生しにくい構造をつくっているのではないだろうか。

   ただ、日本の先輩・後輩も相互に敬意の伴う関係があれば、集団の秩序づくりの基礎としては悪くないと思う。日本の部活事情を知るある学生は「(ドイツの)学校で行うプロジェクトでは皆、自由すぎてまとめるのが大変。日本のように先輩・後輩の関係がほしいと思う時がある」ともらす。

 たしかにドイツの青少年のスポーツの現場を見ていると、あまりにも自由すぎて「ゆるい」と見えることがある。年齢序列を無理に破壊するよりも、相互敬意が伴い、自由に意見を言い合える先輩・後輩関係をどうすれば作れるか。ここから考えてみる必要もあるかもしれない。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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