封鎖なし「スウェーデン」異色の緩い対策のワケ 国民の「常識」はコロナと戦えるのか

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一方、ビジネスインサイダーのノルディック版によると、一部の科学者は政府の対応に懸念を示しており、先月末には2300人以上の専門家が政府の方針に異議を唱える公開書簡を発表しています。

欧州ではイギリスが当初、スウェーデンに類似したソフト対策をとっていましたが、感染の急拡大を受けて3月23日にはロックダウンへと方針転換しています。

「命がけの危険なギャンブル」になっている

こうした中、スウェーデンの独自路線には世界が関心を寄せており、例えばアメリカのワシントン・ポスト紙は、4月9日付の「スウェーデンの緩い対策は裏目に出ないのか」と題したコラムを掲載。

「現時点では多くのことは不明だが、複数のデータは(スウェーデンの)自由放任的なコロナ対策は命がけの危険なギャンブルになっていることを示唆している」と書いています。同紙によると、実際スウェーデンの死者数はノルウェーやデンマークといった他の北欧諸国を大きく上回っています。

また同紙は、「政府は、スウェーデンでは欧州南部のような世代をまたいだ交流は盛んには行われないとしており、実際複数世代が同居する家庭は少ない」にもかかわらず、「最もコロナウイルスに対して脆弱である高齢者が犠牲になっている」と書いています。その背景には、高齢者が自主隔離したところで、彼らの介助をするケアワーカーが感染していれば感染は避けられない構図があるとしています。

現時点では医療崩壊は起きていないようですが、4月13日には、ロヴェーン首相は「もう少し厳しい措置が必要かもしれない」と認めたとする報道も出ています。一方で、感染者の数が落ち着きつつある、という報道もあり、規制を強化するか、国民の常識を信頼するのか、首相としても厳しい決断を迫られているのではないでしょうか。

芳子 ビューエル 北欧流ワークライフデザイナー、アルトスター社長

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よしこ びゅーえる / Yoshiko Buell

1998年にJETROから北欧に派遣され、帰国後に北欧の寝具・雑貨などの輸入を開始。現在的は世界的に有名な「menu」など、北欧の大手メーカー7社の日本代理店を務め、北欧雑貨・家具ブームの礎づくりに貢献。北欧にゆかりが深く、「ヒュッゲ」文化を日本に紹介した草分け的存在とも言われる。群馬県高崎にてヒュッゲをコンセプトにしたインテリアショップも経営、『fika(フィーカ)世界一幸せなん北欧の休み方・働き方』など、北欧についての著書も複数。

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