封鎖なし「スウェーデン」異色の緩い対策のワケ 国民の「常識」はコロナと戦えるのか

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仕事に関しては、スウェーデンはもとよりテレワークが根付いていることもあり、半数以上が政府からの指示はなくても自宅で仕事をしているようです。

スウェーデンが他国とは明らかに違う“ソフト”な対策を打ち出してきた背景には、前述のタグネル氏の存在があります。同氏は1995年にエボラが発生したときにザイールに派遣され、そこでの功績を高く評価されました。2009年の豚インフルエンザの際にはスウェーデン人に集団ワクチン接種を行い、たくさんの人命を救いました。

一方でその際、ワクチンの副作用で睡眠発作病に子ども約400人が罹患し、生涯をこの病と戦わなくてはならなくなった、と批判を受けましたが、最終的には助かった人の数と比較したうえで評価を得たということになります。

人口の57%が抗体を持てば状況が変わる

タグネル氏の考えでは、新型コロナウイルスなどの新しい伝染病は短期間に終息するとは考え難いので、常識的な対策を国民が日常的に行うこと以外に対策はありません。もちろんその中で感染者や死者は出ますが、人口の57%の人々が抗体を持てば、重篤化しやすい人々も救いやすくなる、ということです。

タグネル氏が率いるスウェーデン公衆衛生局には、300人の専門家が属しており、政府はその公衆衛生局の専門家たちの指針に準じて政策を練っています。前述の通り、政府は長期戦になることを覚悟していますが、拡大のペースを抑えることによって、病院に重篤者が殺到する事態を避けようとしています。

前出の知人は、「自分もいずれはコロナウイルスに感染すると思う。でも回復したら、コロナウイルスへの抗体が自分にはできるわけで、抗体をもった人々の数が増えていけば、コロナウイルスは人類の脅威ではなくなる」と話します。現時点では、政府や国民の過半数もこの考え方を支持しているようです。

スウェーデン人の多くが国の方針を支持する理由はもう1つあります。スウェーデン社会では、「自制心」と「責任感」という2つが重要視されており、1人1人が自身に対して、そして社会に対して責任を負うという考え方が浸透しています。なので、政府の打ち出す政策に対しては、「大人の対応」で臨むことが当たり前だとされています。

スウェーデン人は特に自分の権利を主張する傾向が強く、万一他の国のようにロックダウンなどを押し付けられると、自分らしい生活を送る権利が侵害されたと考える人が多いのです。また、政府やメディアが発信する情報も透明性が高く、国民はこうした情報をもとに、自らの責任で行動を決めることに誇りを持っています。政府もこうした国民性を鑑みたうえで、国民の常識に対策を委ねている、と言えます。

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