東電が原発取材を縮小、緊急事態に便乗の批判 本社での会見中止、事故の真相究明に支障も

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わずか12分で終了した「緊急事態」下での会見。福島第一原発に駐在する担当者が説明し、質問できるのは福島市内の会場にいる記者のみだった(撮影:筆者)

また、今回のコロナウイルス感染拡大を踏まえ、電話会議への切り替えを検討している企業も少なくない。医療・介護人材サービス大手のエス・エム・エスは、5月1日に予定している2020年3月期本決算の説明会を電話会議方式で実施する予定だ。マイクロソフトのTeamsなどのグループチャットソフトウエアを用いてウェブミーティング形式で取材に対応している企業もザラにある。

取材機会の縮小は東電への不信感を増幅も

東電の対応が不可解なのは、記者からリアルタイムでの取材の機会提供を求められていながら、実現に向けた努力の姿勢が見られないことにある。電話会議の導入は難しいものではない。原発事故直後から東電の定例会見を取材しているフリージャーナリストの木野龍逸氏は、「緊急事態に乗じて、取材の機会を縮小しようとしているのではないか」と疑うが、こうした声が出てくるのも当然だ。

折しも福島第一原発では、放射性物質トリチウムを含んだ処理水が増加し、海洋での処分を含めた扱いをどうするのかが、地元の産業界や自治体を巻き込んでの論議の対象になっている。福島県内にとどまらず、国際社会でも関心が高いテーマであるだけに、東電には今後もより詳細できちんとした説明と対応が求められている。そうした中での取材機会の縮小は、めぐりめぐって社会における東電への不信感を増幅させることにつながりかねない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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