東電が原発取材を縮小、緊急事態に便乗の批判 本社での会見中止、事故の真相究明に支障も
おしどりマコ氏の質問に東電がすみやかに回答していたならば、東京五輪に対する海外のイメージも変わっていたかもしれない。というのも、東電が回答を遅らせている間に、安倍晋三首相は東京五輪を誘致するため、「放射性物質は原発の港湾内にコントロールされている」などと、世界に向けて間違った事実を説明した。安倍首相の説明に誤りがあったことは五輪誘致決定後に判明した。
こうした不都合な真実は、リアルタイムでのやり取りがあってこそ明るみに出ることが少なくはない。ほかにも、労災事故が発生した時にも東電はしばしば誤った説明を繰り返し、会見中に記者が指摘してようやく訂正する一幕もあった。
最近でも、同様のケースが発生した。福島第一原発から20キロメートル圏内にあるサッカーのナショナルトレーニング施設「Jヴィレッジ」は福島第一原発の事故収束作業の前線基地として、事故直後から東電が使用してきた。その返還に際しては、徹底した除染を実施することを東電は福島県に約束していたが、実際には除染特措法に基づく除染を行わないまま返還されていたことも、記者会見でのやり取り中に明らかになった。
当然ながら、こうしたリアルタイムかつ双方向でのやり取りは長時間に及ぶ。やり取りがかみ合わずに堂々巡りになることもしばしばあったが、インターネットを通じてライブ中継される質疑には、一般市民も注目している。
報道体制縮小の影響はすでに現れている。緊急事態宣言直前の4月6日には1時間22分をかけたのに対し、4月9日の会見はわずか12分で終了。東京の本社会場が閉鎖されて記者の参加ができなかったため、この日の質問は福島会場からのわずか2問のみで終了した。
なぜ「電話会議」を導入しないのか
リアルタイムでの双方向の記者会見は、対面でなければできないわけではない。欧米のグローバル企業のみならず、日本でも少なくはない上場企業が当然のようにウェブ配信と電話を組み合わせた「電話会議」形式の記者会見を行っている。
例えば、以下のようなやり方だ。(1) 電話会議の開催案内を、関係する記者に送付し、参加者を募る。(2) 参加を希望する記者は、氏名や電話番号、メールアドレスを事前に知らせる。(3) 参加登録した記者には、電話会議の前日までに企業側から接続先の電話番号とPIN番号を伝達する。(4) 当日の開始時刻に配信された映像を見ながら、電話を通じて質疑応答が行われる。
大手製薬企業の武田薬品工業は、2000年代から第1四半期および第3四半期の決算説明会でこうした電話会議の仕組みを導入している。電話会議に参加した記者は、他社の記者の質問や企業側の回答内容をリアルタイムで聞くことができる(音声は同社ホームページ上でも掲載)。
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