「野球選手のサイン」値決めする古書店主の矜持

どんな価値があるのか?小野祥之氏に聞いた

文豪の評価の価値観をスポーツに移した、というところだろうか?

「そうですね。でもそこから先は僕しかやっていない。最近、ヤフオクなどでスポーツものに手を出してくる業者もあります。でも、ライバルがいるということは、マーケットが形成されることなので、メリットがあると思います」

古書やサイン類は、原則として現金買い付けだ。いい出物があると、その場で買い取らなければならない。

「ご遺族の方は現金が要りようで売りに出すわけですから。だからそのたびに古本市場で、しばらく売れなかった古書などを売り払ってキャッシュをねん出している。古物商って安く買って高く売るからいい商売だ、と言われますが、10万円のものを10個仕入れても売れるのは2個くらい。

あとはずっと持っているだけ。それでもサインなどメモラビリアはまだ動くけど、古書は売れない。古本だけだったらとっくに潰れていますよ」

日本野球の歴史を紡いできた「古書BIBLIO」

アメリカでは、野球ファンは、古今の名勝負や、偉大な選手についてよく知っている。そうした野球史へのリスペクトの延長線上に今の野球がある。祖父から孫へ、野球を愛する文化が伝えられる、という感じなのだが、日本では球場で風船を飛ばしたりするファンと「野球史」は、あまりリンクしていないのだ。

野球が日本に伝わって約150年、「BIBLIO」店主、小野祥之は、ドラマチックで豊かな歴史を紡いできた「日本野球」に価値を見出すことで、それを後世に伝える手助けをしてきたといえよう。

新型コロナウイルスの感染拡大で、球春はずいぶん先になりそうだ。そういうときこそ「野球の歴史」に思いを馳せたい。

「僕は、“今サイン貰ってきました”みたいな人からは買わない。その人が所蔵していて、何らかの理由で手放すことになったモノに価値をつけます。最大瞬間風速の時に売り抜けようとする“転売ヤー”とは違う。そういう風が収まって砂漠かなんかに埋もれているのを掘り出して価格をつけて売る。考古学者みたいですよね(笑)。

基本的にサインは、自分で楽しむものです。もらった人の価値観です。それを大事にするのは、商売とかを抜きにして人間の基本的なスタンスじゃないですか」

(文中一部敬称略)

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