ほかにも選手サインの鑑定にはいろんなポイントがある。
「日付はあったほうがいいですね。うちにはいろんなサインが持ち込まれますが、“王貞治選手が第何号を打った日のサインです”みたいなのは、歴史的な価値が出てきます。
通のお客さんが来て“この日付はいいですねえ”と言ったり、中には“もっと高くても買うよ”と言う人もいたりする」
サインの真贋は小野にはわかるのだろうか?
「難しいですよね。本当に真似しようと思って書かれたら、僕らでもわからない。100%間違いないのは、目の前で書いてもらったものだけでしょう。いちばん怪しいのはパパラッチみたいな人が持ってくるサイン入りの写真ですね。サインがすごく簡単だったりする。これは怪しい。
だから気にしているのは“出どころ”ですね。ここから出たサインなら間違いないだろう、みたいな感じです。元野球選手や、関係者がお亡くなりになった後、遺品整理にお伺いすることがありますが、そういうものは間違いないので安心です」
小野は、球史に残る大打者、名選手や、名伯楽の名をほしいままにしたコーチなどの自宅に赴き、遺品を整理したり、持ち込まれた品を鑑定したりしている。それだけの信頼があるのだ。
「今の世の中は、サインもネットで売買されますから、だいたいの相場ができますが、それより価格が高くなるのは、出どころ”がいいものか、出来栄えがいいものですね」
沢村栄治がダントツ
では、野球選手のサインでいちばん高値がつくのは誰だろう?
「日本でいちばん高いのは沢村栄治投手。断トツです。そしてそれに匹敵するか、ひょっとして上回るのは吉原正喜捕手。若くして亡くなってしまったから、サインが圧倒的に少ない。お客さんの中には沢村のサインはいくつか持っているけど、吉原はないと言う人が多いです」
沢村は草創期の巨人のエース。ノーヒットノーランを3回記録するも、戦死した。先発投手最高の栄誉である沢村賞はこの投手にちなんでいる。
吉原は駿足強打の捕手。熊本工業高校時代、川上哲治とバッテリーを組んで甲子園で活躍。1938年、このバッテリーはそのまま巨人に入団したが、入団時の評価は吉原のほうが圧倒的に高くて、川上は添え物だったといわれている。しかし吉原も若くして戦死した。
「川上・吉原のバッテリーのサインなんかあったら、すごい値段がつくでしょうね」
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