「野球選手のサイン」値決めする古書店主の矜持 どんな価値があるのか?小野祥之氏に聞いた

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沢村も吉原もともに野球殿堂入りしている。では昨年10月に亡くなった金田正一は?

「金田さんは400勝という絶対破られない記録があります。だからサインの価値はお亡くなりになっても変わらない。でも亡くなってからあと“金田さんのサインある?”と言う声はあまりかからなかった。その点、野村さんと違っていた。値打ちが変わらないから、かえってみんな欲しがらないのかもしれません。

長嶋茂雄さんは人気が高いですが、将来的には金田さんのほうが価値は上がるんじゃないでしょうか。この商売を始めた頃は、稲尾和久さんなど西鉄のものを探すお客さんが多かったんですが、そのあと南海のものが人気になって、ちょっと近鉄をはさんで今は大洋のものが人気です。後身のDeNAベイスターズの調子がいいのもあると思います」

1934年来日したヤンキース選手のサイン。いちばん上がベーブ・ルース(筆者撮影)

人気にもトレンドがあるのだ。では、大リーグでは?

「多分ベーブ・ルースでしょう。でも日本人の価値としてはルースより沢村のほうが高い。

僕らが子どもの頃は『偉人の伝記シリーズ』みたいな本があって、ベーブ・ルースは必ず載っていた。そういう記憶がある人には、価値がある。でも今の若い人にはあまり存在感がない」

ディマジオとモンローのサインは220万円

店内には、ヤンキースの大スター、ジョー・ディマジオのサインがあった。

短冊に書かれたモンローとディマジオのサイン(筆者撮影)

アメリカのセックス・シンボルと言われた女優マリリン・モンローと結婚して1954年2月に新婚旅行を兼ねて来日した際に、ディマジオとモンローが揃ってサインしたものだ。220万円と言う値づけがされていた。

巨人時代の清原和博のサイン(筆者撮影)

「選手の中には、年齢とともにサインが変わる人もいます。清原和博選手は、若い頃は普通の野球選手のサインでしたが、オリックスに移籍してからは『清原和博』と楷書できちんと書くようになった。あの時期のサインはいいですね」

オリックス時代の清原のサイン(筆者撮影)

小野は古書店で修業をして、20年前に独立した。

「もともと古典籍や、夏目漱石、森鴎外などの肉筆原稿などを扱う店で修業しました。

でも、漱石や鴎外の肉筆は仕入れるだけで100万円単位ですから、自分の資金では難しい。そこでいろいろ試行錯誤をして、スポーツ専門になりました。

そのときに、文豪の肉筆を見てきた経験が役に立ちました」

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