水野学×山口周「AIには"世界観"は作れない」 デザイナーの仕事でもこう「二極化」する

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山口:僕は二極分化すると考えています。音楽に関していうと、人工知能に音楽をつくらせる研究は結構進んでいて、まあまあ面白いものをつくるようになっています。

ただ、一瞬のフレーズはつくれても1時間の交響曲は今のところ無理です。始まりと中盤と終わりという物語が構築できないんですね。

例えばショパンのデータを人工知能に大量にのませると、一応ショパンっぽいものはつくれます。ただ、いつ終わるともなくダラダラとメロディーが続くだけでいつまでも終わらない、非常に奇妙な曲です。曲全体の起承転結をつくるということができないんですね。曲に生命性というか、ストーリーがないんです。

一方で、「15秒のフレーズ」をつくることは、それこそ無限にできるわけです。こういう状態になると音楽の知識がない人もどんどん作曲ができるようになるので、音楽の供給量は爆発的に増加することになります。

そうすると作曲の労働単価はほぼゼロになってしまうでしょうね。名前が売れているミュージシャンや作曲家はファンベースという顧客資産がありますからなかなか人工知能には代替されないと思いますが、CM音楽の作曲家の雇い主は代理店や広告主で、彼らにはつねに強いコストダウンの圧力がかかっていますからね。

考えてみれば、坂本龍一さんに頼んでつくってもらいたいような映画音楽を人工知能にやらせるかといったら、そうはならないでしょう。その意味で、きっと二極化するでしょうね。水野さんの仕事が人工知能に取って代わられるかとなると、それはあまり思わないですが。

世界観をつくるプロセスはAIには難しい

水野:アウトプット、デザインの「後」の部分は、AIがやれてしまう。でもデザインの前の部分、この部分を狙ってこういう世界観をつくろうと決めていくプロセスは、AIにはまだ難しいかもしれない。そこが、自分がやり続ける意義だと思っています。

山口:おっしゃるとおりですね。ところで、水野さんは慶応義塾大学で講義してらっしゃいましたが、デザインを学ぶポイントとして何を捉えておけばよいでしょうか?

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