水野学×山口周「AIには"世界観"は作れない」 デザイナーの仕事でもこう「二極化」する

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

水野:端的に言うと「知識×やり方」です。知識が少ないのにやり方だけ知っていてもダメだし、知識が多くてもやり方を知らないとダメ。まずはたくさんのものを見ることがスタートですよね。

そのうえで、「簡単な上達法は?」と聞かれることはよくあります。僕が手がけているだけでも、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、内装デザイン……と分野がさまざまなので、グラフィックだけに絞ると、大きく3つあります。

当たり前のことでもやってみると実際は難しい

水野:1番目は、「らしさ」を見極められるようになること。「シズル」っていう言い方をするときもあるのですが、そのものらしさをしっかりと見極めて、そのものが持つ魅力が伝わる表現をすることが何より大切です。

世の中にあふれるデザインには、出発点からずれちゃっているものが結構多いんです。上質な商品として見せたかったはずなのになぜこんなポップな色を使ってしまったんだろう、とか。世界観をちゃんとつくれていないし、捉えられていない、ということですよね。

『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

2番目は、書体や色といった、デザインにまつわる超基本的な知識を身に付けること。色に関していえば、色相環を理解しているだけでもまるで違いますよね。山口さんには常識中の常識だと思いますが、講演で話すと、色相環を理解していない人って案外いるんです。

3番目は、やっちゃいけないことを知っておくこと。当然ながら差別的表現や、性の多様性への配慮がない表現は一切ダメですよね。それとは別に、デザインの中にも、実はタブーはたくさんあります。

例えば「この書体を使うと、欧米の人はこう感じる」といった知識。また、家に入ってくるチラシでよくあるのが、書体を7、8種類も使っていたり、色を何色も使いすぎていたり、文字の大きさもまちまちで、情報が頭に入ってこないもの。あえて狙ってそういうデザインをしている場合は別として、情報伝達を目的にした場合には、書体、色、文字サイズの種類があまりにも多いと、目的を果たさなくなることが大半です。

山口:そういうふうに明快に言語化されると、誰でもデザインができなきゃおかしい気がしてくる(笑)。当たり前のことのように思えますが、実際やろうとすると難しいですよね。

水野 学 クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント、good design company代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みずの まなぶ / Mnabu Mizuno

1972年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1998年、good design company設立。ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、内装、宣伝広告、長期的なブランド戦略までをトータルに手がける。主な仕事に相鉄グループ全体のクリエイティブディレクション及び車両、駅舎、制服等、熊本県「くまモン」、三井不動産,JR東日本
「JRE POINT」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、黒木本店、Oisix、NTTドコモ「iD」、「THE」ほか。2012年-2016年度に慶応義塾大学SFCで特別招聘准教授を務める。The One Show金賞、CLIO Awards銀賞ほか国内外で受賞歴多数。著書に『センスは知識からはじまる』など。

この著者の記事一覧はこちら
山口 周 独立研究者・著作者・パブリックスピーカー、ライプニッツ代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまぐち しゅう / Shu Yamaguchi

1970年東京都生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発などに従事。中川政七商店社外取締役。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事