水野学×山口周「AIには"世界観"は作れない」 デザイナーの仕事でもこう「二極化」する
水野:端的に言うと「知識×やり方」です。知識が少ないのにやり方だけ知っていてもダメだし、知識が多くてもやり方を知らないとダメ。まずはたくさんのものを見ることがスタートですよね。
そのうえで、「簡単な上達法は?」と聞かれることはよくあります。僕が手がけているだけでも、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、内装デザイン……と分野がさまざまなので、グラフィックだけに絞ると、大きく3つあります。
当たり前のことでもやってみると実際は難しい
水野:1番目は、「らしさ」を見極められるようになること。「シズル」っていう言い方をするときもあるのですが、そのものらしさをしっかりと見極めて、そのものが持つ魅力が伝わる表現をすることが何より大切です。
世の中にあふれるデザインには、出発点からずれちゃっているものが結構多いんです。上質な商品として見せたかったはずなのになぜこんなポップな色を使ってしまったんだろう、とか。世界観をちゃんとつくれていないし、捉えられていない、ということですよね。
2番目は、書体や色といった、デザインにまつわる超基本的な知識を身に付けること。色に関していえば、色相環を理解しているだけでもまるで違いますよね。山口さんには常識中の常識だと思いますが、講演で話すと、色相環を理解していない人って案外いるんです。
3番目は、やっちゃいけないことを知っておくこと。当然ながら差別的表現や、性の多様性への配慮がない表現は一切ダメですよね。それとは別に、デザインの中にも、実はタブーはたくさんあります。
例えば「この書体を使うと、欧米の人はこう感じる」といった知識。また、家に入ってくるチラシでよくあるのが、書体を7、8種類も使っていたり、色を何色も使いすぎていたり、文字の大きさもまちまちで、情報が頭に入ってこないもの。あえて狙ってそういうデザインをしている場合は別として、情報伝達を目的にした場合には、書体、色、文字サイズの種類があまりにも多いと、目的を果たさなくなることが大半です。
山口:そういうふうに明快に言語化されると、誰でもデザインができなきゃおかしい気がしてくる(笑)。当たり前のことのように思えますが、実際やろうとすると難しいですよね。
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