「マナー」が難関私立中の入試で問われる理由 家庭で身に付けておきたい学習の土台とは

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あるいは、教室にゴミが落ちていた場合、自分が出したゴミでなくても拾ってゴミ箱に捨てることができているでしょうか。

ほかにも、わからない問題を先生に質問に行くときに「先生、これわかんない」ではなく、「先生、この問題のこの部分がわからないので教えてください」という具合に、正しい言葉で自分の意思を伝えることができているでしょうか。

カバンを放置し、ゴミを拾わず、単語を並べただけの言葉でしか話しをしないのは、相手のこと、自分以外の人のことを考えられていないからにほかなりません。

こうした日常生活におけるルールやマナー、言葉遣いなどにも気を配れる子どもは、文章を読むときにも計算をするときにも、細かい部分にまで注意を払うことができ、見落としや勘違い、意図の取り違いが少なくなります。このように、実は入学試験と日常生活は根本的な部分で密接につながっているのです。

学習しているときだけでなく、日常生活のあらゆる瞬間において、1つひとつのことをきちんとできるようにしつけや教育をしていくことは、着実に学習能力の向上につながっていきます。

「自分の力で考えて行動できる子ども」になるために

「自分の力で考えられる子どもに育てるにはどうすればいいですか」という質問は、保護者の方からもいただくことが多くあります。

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しかし、私は勉強だけ自分の力でできる、そんな器用なことができる子どもはいないと思っています。つまりは、何事も自分でできることは自分でできるようにしないといけないということです。

希学園でも、自分で出したごみは自分で拾うようにしたり、自分が使った物をあとの人が使いやすいようにきちんと整理整頓しておくようにしたりするなど、小さなことではありますが、子どもたちに日頃から「できることは自分でやる」を意識させる状況をつくっていくようにしています。

当たり前のことだと思われるかもしれませんが、とくに高いレベルでこれらを実践できている子どもは、確実に伸びていきます。

繰り返しになりますが、人間的な成長は学力の成長にも直結しています。ですから、家庭で保護者の方が行う「個別のしつけ」と、学校や塾で行う「集団でのしつけ」の両立が大切だと考えています。

学んだことが成果に結び付くかどうかは、最終的には子ども自身の気持ちの持ち方と努力次第です。だからこそ、人としての正しい価値観を身に付けさせるための「しつけ」を大切にすることが、学力を伸ばすことにも必ずつながっていきます。

机上の勉強重視の教育になっていないか、お子さんとの向き合い方を一度考えてみてはいかがでしょうか。

黒田 耕平 希学園学園長

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くろだ こうへい / Kouhei Kuroda

1975年兵庫県伊丹市生まれ。大阪大学在学中より塾講師業に携わり、希学園の算数科講師として、灘中をはじめとした最難関中学校へ多数の合格者を輩出。2009年より希学園学園長に就任した後も、経営トップと二足のわらじをはきつつ、低学年から灘中受験を目指す6年生まで幅広く授業を担当。自ら生徒指導の第一線に立ち続けながら、塾生に一生懸命にやりきることの大切さとその先にある合格・成長の喜びを伝え続けている。著書に『未来につなぐ中学受験』(クロスメディア・パブリッシング)。2015年より神戸新聞にて教育・受験コラムを連載中。

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