280円時代に終止符、牛丼価格で三つどもえ 勝つのは、値下げ組?値上げ組?
コップの中の争い
吉野家が値上げに踏み切る前兆はあった。2月21日、日本フードサービス協会が行った懇談会の場で、会長を務める安部修仁・吉野家社長は、「インフレ誘導の中で、コップの中の戦いをしている。値下げよりも、付加価値を高めて単価に反映し、商品価値も経済も高めたほうがいいと思う」と話していた。
昨年12月に吉野家が投入した「牛すき鍋膳」(580円)が好調で、既存店売り上げの回復に貢献している。こうした高単価メニューの売れ行きも、今回の値上げに向けた自信になっているはずだ。
「並盛」の重みが会社によって異なることもポイント。吉野家ではメニュー販売構成比の実に5割を牛丼並盛が占める。ほかの2社は非公表だが、松屋フーズの松屋では定食メニューが多く、牛めし並盛の割合は4割弱とみられる。すき家はトッピング商品が充実しており、その割合は松屋よりもさらに低いとみられる。それだけに、吉野家が値上げに動く意味は大きい。
最後に発表した松屋フーズは、牛めしの並盛を税込み280円(本体価格267円)から290円(同269円)に改定する。これまでどおり、みそ汁の無料サービスなどを強調することで、他社にはないお得感を訴える。
4月以降は、吉野家300円、松屋290円、すき家270円となり、横一線だった価格設定は崩れる。値下げによって、すき家の集客力がさらに高まるのか。それとも、吉野家の付加価値戦略が吉と出るのか。消費増税を機に対応が分かれた価格設定が、各社の業績を大きく左右することになりそうだ。
(週刊東洋経済2014年3月29日号<24日発売>核心リポート03に一部加筆)
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