ロシア対外諜報のトップが語る日本との関係 日本は良き隣人、アメリカの存在が問題だ
石川 最近、日本である事件がありました(注)。そして1人のロシアの外交官が、貿易代表部に勤めていました人ですが、日本を去りました。日本の警察はこの件をあなたの機関による工作だとしています。なぜ、このような事件が続くのですか。(編集部注:今年1月、ソフトバンクの元社員が社外秘の情報をロシア貿易代表部の職員に渡していたとして逮捕されたもの)
ナルイシュキン 私たちは日本政府の措置はロシアに対する非友好的な態度だとみなしています。その外交官についていえば、私の知る限りでは、任期を終わったということです。まさに任期が終わるべき時に終わり、登録の期間も終了した。だから帰国したということで、私の知る限り、日本側からは公式には彼に対して何の嫌疑もかけられていません。何らかの嫌疑があるのなら言ってください。
石川 外交官の肩書を使ってあなたのもとで働いていたと。
ナルイシュキン プレスは何とでも書きますよ。本質的には何の嫌疑も問われていないのです。彼は任期を終わり、戻っただけです。だから繰り返しますが、非友好的な行為、しかもわれわれの評価では、この行為はアメリカの求めに応じて行われたということです。それだけに日本の主体性がないということで、そのことも残念ですがね。日本にとって。
石川 この事件は日ロ関係に影響しますか。
ナルイシュキン 全体としてはまったく影響ないですね。われわれは治安機関・諜報機関のラインも含めて、経済面でも政治面でも文化面でも日本との関係を深めたいですね。
5カ国首脳会議のテーマは「崩壊寸前の国際法秩序」
石川 プーチン大統領は、アメリカ、ロシア、中国、イギリスそしてフランスの安全保障理事会常任理事国による首脳会議を提案しています。私はもちろんこの5カ国が重要な役割を果たしていることは認めますが、なぜ戦争から75年たった今、再び5カ国首脳会議なのか、奇妙に思います。
この5カ国で第2のヤルタみたいな会談を開き、再び世界におけるそれぞれの影響を及ぼす地域を分けようとしているのですか。それとも、もっと率直に言いますと、何か閉鎖されたクラブを作り、そこでの決定をほかの重要なプレーヤー、日本も含むプレーヤーに押し付けようとしているのではないですか。
ナルイシュキン 閉鎖クラブを創設しようなどとは思っていません。ただ客観的に見てですね、この5カ国は、安全保障理事会の常任理事国ですし、この5カ国だけに拒否権が付与されているのは偶然ではありません。ほかのどの国でもなくこの5カ国だけが法的に核保有国であることが認められています。もっとも実際の保有国はもっと多いですが。
繰り返しますが、閉鎖クラブではありません。もしもプーチン大統領の呼びかけが実現して、5カ国の首脳会議が開催されれば、会議は閉ざされたものではなく、公開されたものとなるでしょう。プーチン大統領はまさに世界の平和と安定のために呼びかけたのです。
5カ国首脳会議のテーマですが、私の考えでは、まずは国際法秩序の問題です。国際法秩序は今や崩壊寸前です。その結果として、世界の平和と安定は危機にさらされています。プーチン大統領はまさにこの観点から5カ国首脳会議を呼びかけたのでしょう。
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