ロシア対外諜報のトップが語る日本との関係 日本は良き隣人、アメリカの存在が問題だ

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石川 ではどのような平和条約をあなたは日本と結びたいのですか。平和条約は必要だと考えていますか。

ナルイシュキン ウラジーミル・プーチンが2年前に提案した「前提条件を付けずに平和条約を結ぶ」という言葉を覚えているでしょう まだこれは提案のままですが、私はこの提案に大賛成です。

石川 でも、われわれの間には問題があります。その解決が必要です。

ナルイシュキン まず平和条約を締結することが大事です。そしてわれわれの間に存在する問題を交渉すればよいでしょう。戦争が終わってから75年たちましたが、お互いに良好な関係にあって、貿易額も大きいし人の交流もある。文化交流も広範に行われている。この両国の間に平和条約がない。これは正常な状態ではありません。そのため平和条約は必要です。私はプーチン大統領の「前提条件をつけずに平和条約を」という提案を心底、支持しています。そうすればあなたの言う問題の解決も容易になるでしょう。

(筆者解説)
日ロ平和条約については、私はあえて国境線画定の問題を脇において、日米安保との関係に絞って聞いてみた。予想通り日米安保への懸念をかなり率直に表明した。そして日本が中立であればよいと非現実的な願望まで口にした。ただ非現実的な願望であることはナルイシュキン長官も十分わかっているだろう。この日ロ関係の部分については、長官は「まったく個人の意見だが」と、何度か強調した。
平和条約交渉については、「前提条件なしの平和条約締結を」というプーチン大統領のウラジオストク提案を全面的に支持し、この条約に基づいて領土問題を交渉すれば問題の解決は容易になるとしている。ロシアの公式的な立場である。平和条約がないことは異常であり、平和条約が必要だという認識を持っている。
この点、「領土問題の解決なき平和条約はありえない」とする日本側との乖離は大きい。ただ日本への敵意はまったく感じられなかった。日米安保と中ロの戦略的パートナーシップという北東アジアの現実に基づいて、ロシアが日ロ平和条約の締結を自らの安全保障に資すると考えるのかどうか、つまり日米と中ロという大きな対立軸の間に、日ロの安全保障という橋を架けることができるのかどうかが、今後の領土交渉の焦点となるだろう。

 

ソフトバンク元社員の事件はアメリカが絡んでいる

石川 SVRと日本の相応する機関との関係強化についてはどのような見通しを持っていますか。

ナルイシュキン 関係は肯定的ですよ。私が日本を訪問して1年になりますか。テロ対策の分野ではかなり詳細な話もしましたし、お互いが関心をもつ不安定地域についても深い意見交換ができました。

石川 北村さん(北村滋国家安全保障局長、当時は内閣情報官)とですか。

ナルイシュキン そうですよ。こうした関係は重要です。われわれが最高指導部に何らかの助言をするように、日本の同僚も同じことをしますよね。だから不安定な地域について、それぞれの意見や見方を交換することは重要です。日本のパートナーとの相互関係は発展していますし、私たちはそうした関係に満足しています。まあ一般的にいえば、たとえ問題が存在しても、対外諜報どうしや治安機関どうしは、プロフェッショナルとして良い関係を持てて、理解し合えるものです。

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