ロシア対外諜報のトップが語る日本との関係 日本は良き隣人、アメリカの存在が問題だ
石川 私たちが心配するのは、来年、新START(新戦略兵器削減条約)が期限を迎えることです。新たな軍拡競争が始まるのではないかと懸念しています。特に核兵器の分野で。このテーマについても議題となるのですか。特に日本は中距離核兵器の軍拡が始まるのではないかと心配しています。中距離核兵器は、日本にとっては海の向こうの脅威ではなく直接の脅威です。私たちとしては軍拡ではなく、日本の周辺にある中距離核の削減をしてほしいのです。
ナルイシュキン それは理解できますよ。そう思います。新STARTについていえば、これは全地球的な戦略的安定を規定する条約ですから、そのことも話し合われるでしょう。ただより重要なのは、平和と安全の基本原則となる国際法秩序の問題でしょう。
石川 今年、安倍首相は2回、ロシアを訪問するかもしれない。5月9日と9月2日か3日の前後です。この両方とも深く歴史と結びついています。5月9日はあなた方にとっては対ドイツ戦勝記念日です。9月2日、3日は、まさに第2次世界大戦終結の日としてわれわれの悲劇的な歴史と結びついている。この歴史と深く結びついた日に戦後75周年の今年、安倍首相がもしもロシアを訪問して、日ロ首脳会談が行われるとしたら、どのような意味を持つべきですか。9月については、両首脳は単に会談するだけではなく、歴史を克服するための何らかの行動をする必要があるのではないですか。
ナルイシュキン 何を話すべきか、どのような意味を持つべきか。私はですね、平和のために、この大戦でいかに多大な犠牲を人類が払ったのか、そのことを両指導者が思い出し、記憶にとどめ、そして犠牲者を慰霊して、平和を維持することを誓うべきだと思います。もちろん会談の中身はもっと深いものになるべきですが、その日に行われる意味としては、こういうものだと思います。
両国の首脳が平和について語るべき
石川 もしも、9月2日、3日に会談が実現した場合、戦争と平和ということに対する、両首脳による何らかのアクションがあるべきだと個人的には思います。ウラジオストクの周辺には日本の抑留者の慰霊碑や墓もあり、またあなた方の無名戦士の墓もある。何か考えられるでしょうか。
ナルイシュキン 5月9日と9月2日は、大変象徴的な意味を持っている。だから双方のリーダーはこの日の意味について考え、いわば利用して、この日の歴史についての立場を示すのではないか。この日に至った事象、そして両国の犠牲、いや、第2次世界大戦の結果としての人類全体の犠牲について、立場を示すと思う。そのことは、平和というものがいかに脆いものであるかを警告することになり、ロシアと日本両国にとって、この平和を共に守る以外に選択肢がないことを示すだろう。
今も不思議に思っている。なぜナルイシュキンが私に会ったのか、そしてこのような非公式な雰囲気の中での対話が行われたのか。つまり、彼の意図は何かということだ。SVR長官として外国人のジャーナリストに会うことの許可はトップレベルからも得ているだろう。今後5月9日以降には国防・外務・治安関係でも人事異動があるともささやかれているので、もしかしたら、また表に出る立場に戻ることになるのかもしれない。
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