中国36歳コロナ患者が「退院後に死亡」の顛末 武漢のコンテナ病院は退院を一時ストップ

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だが、午後になって妻がホテルに到着したとき、李亮は体に力が入らず、妻の声を聞いても起き上がることができなかった。妻が彼の体を起こすと「喉が渇いた」と言ったため、水を飲ませようとしたが口からこぼれ落ちた。李亮は「家に帰りたい」とつぶやいた。

李亮は2月3日に発熱の症状が出始め、8日に社区(訳注:団地のようなコミュニティ)の隔離施設に移されたが、それ以降、自宅に帰ることはできなかった。9日夜、彼は検査で新型コロナウイルスの陽性だとわかり、12日にコンテナ病院へ移った。14日間の治療を経て、専門家チームの判断によって退院が許可された。その後、退院患者の”再発”を防ぐ新規則に基づき、彼は隔離施設で14日間隔離されていた。

「病魔との戦いに勝利した」はずだった

退院基準によると、李亮はすでに”治癒”したことになっていた。彼は2月26日にコンテナ病院を離れた後、親戚や友人たちに、「病魔との戦いに勝利した」という吉報を伝えた。隔離施設にいる間も妻に、「自分は抗体を手に入れた。献血して人を救える。隔離施設に戻ってボランティア活動もできる」と語っていた。

彼は医師免許こそ持っていないが、社会的な身分は医師同然だ。整形外科のリハビリクリニックに勤め、中医学の専門家である張学煉の教えを受けたこともある。クリニックは武漢市中心病院のすぐそばにあり、眼科医の李文亮(訳注:新型肺炎の感染拡大を早くから警告していたが、自らも新型肺炎で亡くなった)も、彼の治療を受けたことがあった――。

李亮は一度妻の名を叫んだが、意識は朦朧としていた。看護師が駆け付け、彼のまぶたを開いて確認すると、急いで部屋を出た。妻の王梅のもとにホテルのフロントから電話があり、120番(訳注:日本の119番に相当)に電話するよう指示した。

3月2日午後4時40分ごろ、120番から王梅に折り返しの電話があった。李亮は救急車で近くの普愛病院に移送され、その後、訃報が知らされた。彼の遺体はすぐに火葬されたという。

李亮は36歳。体は健康かつ丈夫で、クリニックでは整骨を担当していた。2月3日に若干発熱し、翌日の午前中に自宅近くの普愛病院へ行き、肺のCT検査を受けた。その結果、「右肺中葉、右肺下葉および左肺にすりガラス状の、にじんだ、細長くねじれた影が多くある」ことがわかった。医師は報告書の総括部分に、「両方の肺が感染しており、ウイルス性肺炎の可能性がある」と記している。

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